派手な展開も、大きな事件もないのに、不思議と記憶に残り続ける作品ってありませんか?
登場人物の距離感や、流れる空気、沈黙の使い方まで含めて、いかにも2000年代初頭の日本映画らしい手触りがあって、久しぶりに観返すと「ああ、こういう映画が好きだったな」と思い出させてくれる。
今回はそんな映画『Laundry』について、紹介してみたいと思います。
映画『Laundry』概要
映画『Laundry』は森淳一氏の同盟小説を原作として2002年に公開された日本の映画です。
あらすじは以下の通り。
脳に障害を抱える青年テルは、祖母が営むコインランドリーで洗濯物を盗まれないように見張り続けている。そんなある日、水絵という女性に出会ったテルは、ランドリーにワンピースを残したまま故郷へ帰ってしまった水絵を追って外の世界へと足を踏み出すが……。
Laundry ランドリー:作品情報・キャスト・あらすじ|映画.com
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映画『Laundry』のレビュー・感想
『Laundry』は、コインランドリーというとても日常的な場所を舞台にしながら、人がそれぞれ抱えている「どうにもならなかった過去」や「行き場のない気持ち」を、驚くほど静かに描いていく作品です。
窪塚洋介さん演じる主人公がどこか現実から少しズレた場所で生きている人物だとしたら、小雪さん演じる彼女は、過去に深い傷を負い、それを抱えたまま時間が止まってしまった人。
彼女の役は、明確に説明されるわけではないけれど、ふとした表情や言葉の端々から「簡単には他人を信じられなくなってしまった理由」がにじみ出ています。
特に印象的なのは、小雪さんの演技が“悲しみを語らない”ところ。
重たい過去を背負っているのに、それを感情として爆発させることはなく、むしろ抑え込んで、静かにやり過ごそうとしている。
その抑圧された感じが、コインランドリーの無機質な空間と妙にマッチしていて、観ている側の想像力を刺激してくるんですよね。
そんな彼女と主人公が、やがて身を寄せることになるのが、内藤剛志さん演じる男性の存在です。
この人物もまた、決して明るい人生を歩んできたわけではなく、どこか世間からはみ出した場所で生きている。
彼は父親のようでもあり、保護者のようでもあり、でもどれとも少し違う、曖昧な立ち位置にいます。
内藤剛志さんの役がいいのは、「救済者」になりきらないところ。
二人を守ろうとはするけれど、何かを劇的に変えてくれるわけではない。
ただ、一緒に時間を過ごし、同じ屋根の下で暮らすことで、「ここにいてもいいんだ」と思わせてくれる存在なんですよね。その距離感がとてもリアルでした。
三人で過ごす時間は、決して幸せいっぱいというわけでもなく、むしろ不器用で、ぎこちない。
それでも、小雪さん演じる彼女が少しずつ心を緩めていく過程や、主人公が誰かと同じ場所で生きることを受け入れていく様子は、派手さはないけれど確かな変化として伝わってきます。
『Laundry』は、過去を乗り越える物語というよりも、「過去を抱えたまま、それでも生きていく場所を見つける話」なのかもしれません。
小雪さんの役の暗さや、内藤剛志さんの役の包容力があるからこそ、主人公の純粋さや危うさも際立つ。
洗濯物が回り、やがて乾いていくように、登場人物たちの時間も、少しずつ前に進んでいく。
その変化は本当にわずかだけれど、観終わったあとにふと胸の奥に残るものがあります。
テンポの良さやわかりやすさを求める人には向かない作品ですが、感情を大きく動かされるよりも、じわっと染みる映画が好きな人には刺さると思います。
静かな映画だけれど、人の弱さや優しさをちゃんと見つめたいときに、そっと思い出したくなる一本でした。
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映画『Laundry』まとめ
というわけで、映画『Laundry』を紹介してきました。
よかったらぜひこの機会に観てみてください。
この記事を書いた人:藤代あかり(@akarifujishiro)


