映画『ポネット』 少女はどう母親の死と向き合うのか

映画

親しい友人、愛する恋人や家族など、身近な人が亡くなるということは私たちの人生の中でも特に大きな悲しみを生むできごとです。

その現実とどう向き合っていくか、というのは大人にとっても大変難しいことではありますが、

それが、まだ幼い子どもであったら、どうでしょうか?

4歳の少女は母親の死とどう向き合い、受け入れ、昇華していくのか。

今回はそんなテーマを持った『ポネット』というフランス映画を紹介していきたいと思います。

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映画『ポネット』概要

『ポネット』基本情報

『ポネット』は1996年(日本での公開は1997年)に公開されたフランスの映画です。監督はジャック・ドワイヨン氏。

なお、『ポネット』は本作品の主人公である少女の名前。

そんな、亡くなってしまった母親の帰りをひたすら信じて待ち続ける4歳のポネットを演じたヴィクトワール・ティヴィソルさんの熱演は高く評価され、

彼女は1996年のヴェネツィア国際映画祭の主演女優賞を史上最年少となる5歳で受賞しています。

なお、映画『ポネット』のあらすじは以下の通りです。

事故で亡くなってしまった母親を、ひとり待ち続ける少女ポネット。そんな彼女を見た周囲の大人達は、彼女に死の意味を教えるが、ポネットは逆に自分の世界に閉じこもってしまう。そんな時、彼女の前にある“奇跡”が訪れるが……。
引用元:映画 ポネット(1996)について 映画データベースall cinema

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『ポネット』のレビュー・感想

キリスト教の教え、また宗教に裏付けされた死生観といった側面から、価値観や人生観の違いを感じる部分はあります。

また、ラストが神様によって引き起こされた奇跡(?)という感じのエンディングについても、

あんなに望んでいた母親と再会できたことが彼女にとっての救いとなったととらえるか、

もっと、たとえば父親など生きている人間の側から彼女を救っていく結末はなかったのかととらえるかによって、評価が分かれそうだな、とも感じました。

とはいえ、大人たちがほとんど出て来ず、代わりに全編を通してポネットを始めとした子どもたちの言動に焦点を当てていたことで、

オブラートに包むといったこともなく、そして相手がどう受け取るかということも考慮されず、かといって悪意があるわけでもない。

「亡くなった人が帰ってこないのは、生きている人たちが本当に待っていないからだ」
「ママが亡くなったのは子どもが悪い子だからだ」

いろんな意味での素直さによるものですが、むき出しの刃物のような本心からの言葉が出てきてしまう、そんな子どもたちの一種残酷とも言える側面がよく描かれた、そんな作品だなと感じました。

それはもちろんこの映画が4歳の少女が母親の死とどう向き合っていくかが主軸の作品だからともいえますが、

大人の視点が過剰に入りすぎなかったことで、過剰な演出を始めとしたお涙頂戴ものに転じていかなかった点が、

わたしがこの作品を好きなひとつの理由でもあります。

ただ、父親を始めとした周りの大人たちといった生きている人の側からのアプローチが彼女が前を向いて歩いていくことにあまり影響しなかったので、

現実に、小さな子どもが死というものに出会った時にどう対応して一緒に向き合っていくか、という問いをもってこの映画を観ると、答えらしきものは得られないかもしれません。

また、キリスト教の思想が深く根付いていない文化で同じようなテーマを取り扱った時にどんな解釈と展開を迎えていくのかも少しみてみたいな、とも思いました。

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映画『ポネット』まとめ

というわけで、映画『ポネット』を紹介してきました。

身近な人にとっても、そして自分自身についても、誰にとってもいつかは訪れてしまう「死」

その時にどう向き合っていくか。
悲しみとどう折り合いをつけていくか。

自分に子どもがいたら、どうフォローしていくか。

お涙頂戴な展開に惑わされることなくそうしたことを考えていくキッカケとして、ぜひこの映画を観てみてください。

この記事を書いた人:藤代あかり(@akari_fujishiro)