旅の恥は書き捨てていこう

企画

今回も3000文字チャレンジという企画への参加記事となります。
というわけで、お題と企画のルールについてはこちらから↓

なお、今回のテーマは「旅」ということで、これまで行ってきた様々な旅の中でも特に思い出深いエピソードをふたつ書いていこうと思います。

ちなみに、記事中に飛行機に搭乗する際の機内・機上持ち込み禁止品について書いている部分があるのですが、

一部制限付きで持ち込み可能なものについては以下の国土交通省から出されている資料をご参考にしていただければと思います。

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エチケットvs空港の保安検査

あれは忘れもしない、高校一年生の秋にあった修学旅行。

この年の旅先は羽田空港から飛行機に乗り、長崎へと向かうものでした。

で、飛行機への搭乗となると必ず通過する場所がありますよね。

そうです、保安検査です。

飛行機への持ち込みが禁止、もしくは制限されているものが手荷物や預ける荷物の中に入っていないかということをチェックするアレです。

ちなみに、飛行機への持ち込みが全面的に禁止されているのは以下のようなもの。


・高圧ガス→ライター用の補充ガス、カセットコンロ用のガス、キャンプ用のガス、ダイビング用のボンベやスプレー缶など
・引火性の液体→オイルタンクタイプのライター、オイルライター用の燃料やペイント類など
・火薬類→花火やクラッカー、弾薬など
・可燃性の物質→徳用のマッチ、炭など
・酸化性の物質→小型の酸素発生器、漂白剤や瞬間冷却剤など
・毒物→殺虫剤や農薬など
・その他の有害なもの→エンジンやリチウム(イオン)バッテリーなど
・腐食性物質→液体バッテリーや水銀、化学反応によって熱を発するものなど
・放射性物質

また、一定の条件下で飛行機に持ち込めるものもあります。詳しくは冒頭で紹介した国土交通省の資料をご参考にしてみてください。

さて、私が高校1年生の時の修学旅行に向かうために通過した羽田空港の保安検査場の話に戻りましょう。

花も恥じらう、なんていう言葉が世の中にはありますが、花さえも引け目を感じるほど美しい少女であったかはさておいて、青春時代真っ盛りの女子高生。

秋、とは言いましたが、9月とまだ夏の名残の暑さを残す時期。

私が当時通っていたのは女子校でしたので、保安検査の場ではあるものが、大袈裟な表現ではなく山として築き上げられていました。

それは何かというと、色とりどりのスプレー缶。

いわゆる制汗スプレーというやつです。

体育や運動部の部活の前後にシュースコーとあちらこちらで噴射され、そのスプレー缶の色の数だけの匂いが混ざり合い、一寸先も不協和臭(今作った造語です)のミスト状態になる、夏の風物詩のアイツ・制汗スプレーです。

私もその山にひとつ痕跡を残したというのはまた事実ではあるのですが、

私の場合、問題はそこにはありませんでした。

制汗スプレーの山に燦然と輝いたのは、それはそれは小さなスプレーでした。

小林製薬の「トイレその後に 携帯用」です。

トイレで用を済ませたのちにシュッとスプレーすることで、スッキリ爽やかミントの香りを残していこうという、

小林製薬らしいわかりやすいネーミングが施されたその商品、とてもいいものなんですけどね。

においに関するエチケットを重んじるあまり逆に恥ずかしい思いをするという、後にも先にも自分の中ではなかなかに強烈な旅のエピソードがここに生まれたのでありました。

穴があったら入りたかった。

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ひとり旅と筋肉痛と私

突然ですが、この記事を読んでいただいているみなさまにはひとり旅の経験はあるのでしょうか?

弾丸日帰りツアーと称して新幹線で西へ北へということは社会人になってから数度やったことがあるのですが、

宿泊を伴うひとり旅は、私の場合は後にも先にも大学4年の卒業直前、ただ一度きりです。

あれはまだ3月になるかならないかの頃、私は1人、群馬県を代表する温泉地である『伊香保温泉』へと旅立ちました。

本来であれば恋人と行く卒業旅行のはずだったけど直前で別れたという、まぁ傷心旅行も兼ねたひとり旅です。

まぁそうした背景はさておいて、旅自体は概ね楽しいものでした。

オフシーズンということもあって温泉にもゆったり入れましたし、ザ・地元という感じのお店で美味しい料理とお酒を嗜んだりと、

元来超がつくほどのマイペース人間としては、自身のペースで非日常空間で過ごせたこと、それ自体が自分に合っていたといいますか。

当時は実家暮らしだったということもあり、羽を伸ばせたという意味合いでも、とても貴重な経験だったかな、と今でも思います。

しかしこの1泊2日の旅、すんなりとは終わらなかったんですね。

事件は2日目、泊まっていたホテルをチェックアウトした後の帰り道で起こりました。

行きは最寄駅であるJR渋川駅から約30分程度のバスに乗って伊香保温泉にたどり着いた私だったのですが、

そこまで入り組んだ道でもない様子だったので、帰りはお散歩がてら駅まで歩いて帰ろうかなと思ったんですね。

ここまでは良かったのですが、渋川駅に向かう途中、こんな看板を見つけまして。

「水澤観世音まで3km」

渋川駅までの直通ルートからは逸れる方向に案内の出ているその看板。

当時から神社仏閣めぐりは好きだった私は、せっかくここまで来たんだし寄って帰ろうかな、と、迷うことなく進路変更をしました。

で、水澤観世音のある水澤寺に立ち寄ってお参りをし、お寺の真向かいにある食堂でご当地名物の「水沢うどん」を食し、さて帰ろうか、とバス停に立ったのですが……。

バス停に掲示されている料金表を見て、しまった、と思ったのです。

この地に走るバスは、どこで乗降しても料金が一律という形式ではなく、距離によって料金が加算されるタイプ。

旅行ということでそれなりに現金は持ってきていたし、何なら当時からやっていたいわゆる「お小遣いサイト」で貯めたへそくりの入っている口座のキャッシュカードも持ってきていました。

まぁそのキャッシュカードが磁気以上か何かで引き出せなくなっていたというオチが前夜についていたんですが。

平たくいうと、その時いた水澤寺から渋川駅までの運賃が、財布の中の現金をオーバーしていたというわけです。

(Suicaには帰りの電車賃が残されていたので、駅までたどり着けば帰宅することはできる)

とはいえ、駅までの距離が近づけば、それだけ料金も下がるので、とにかく手持ちの現金でバスに乗れるまで歩けば良いのだ。

バスが通るような道路は1つしか見当たらない状況だったので、バス停とバス停の間は決して近くはなかったものの、道をたどっていくこともそんなに難しいことではなさそうだし、

考えてみれば終電を寝過ごして2時間くらいかけてバス停をたどりながら帰宅したこともあったし大丈夫だろう。

そして、私の手には、当時auが監修(?)していたマップ型ナビである「EZナビウォーク」もありました。(今もあるのかな)

だけどね、22歳の私よ。

平坦な道の約2時間と、山道の約2時間はやっぱり違うのだよ。

当時の自分に合う機会があるとしたら、こんな一声をかけるでしょう。

もうね、本当に「下山」という感じでしたもの。

まずね、出発地点から目的地の間の高低差もさることながら、途中のほんの一部を除き、歩道というものがほぼなかったんですね。

何せね、人が歩くことがたぶん想定されてない感じでしたからね。車とかバスとか、四輪駆動車でしょう、みたいな。

なので、ガードレールのすぐ脇、白線との間の狭い狭い場所を頑張って歩こうとするんですけど、

この時期まだ溶けきらない雪も残っていましたので、ちょくちょく車道にはみ出ざるをえなかったりもするわけです。

途中で西洋のお城のような建物に遭遇したりもしました。

看板をよく見ると、愛を育む(?)ことに特化した(?)大人の楽しいひと時のための宿泊施設でした。

もっとよく記載内容を見ると、お部屋の中でビリヤードができると書かれていて、

「それ違う球突きー!!」

というなんとも下世話なフレーズが脳裏をよぎりましたが、ひとり旅なので共有する相手もいません。

バス停に遭遇する度に減りゆく、目指す駅までの料金。

しかし小休止のために立ち止まった際に、ハタと気づくわけです。

よくよく調べてみたら渋川駅と、そのひとつ隣にある八木原駅と、その時自分がいる場所とでは距離にほとんど差がありません。

八木原駅は渋川駅から電車に乗った場合、当時横浜にあった自分の家へと帰宅する際に通過する駅です。

これ、八木原駅目指した方が結果としてお財布に優しくない??

そんなに大きな差ではないはずなのに、
(歩いたら喉が乾くので飲み物を買ってしまったり、とかすればあっという間に埋まりそうなくらいだった)

その頃にはバスに乗るという考えはすっかり頭の中から消え去っていました。

そうして、伊香保温泉から水澤観世音まで約3km。水澤観世音から八木原駅まで約8km。

歩ききって、やっと巡り合えた電車に乗り込み帰宅した私は、翌日から数日間にわたって、

生まれたての子鹿だってもう少ししっかり立って歩けそうなものでしょう、というくらいの筋肉痛に見舞われたのでした。

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旅の恥は書き捨て・まとめ

というわけで今回は、個人的に何年経っても忘れなれない、思い出すと恥ずかしくもある強烈に印象的な旅のエピソードをピックアップしてみました。

ふたつのエピソードの共通点はなんだろうと思うんですが、

良かれと考えた思いつきに対して、下準備も下調べも一切行われていない&追いついていない点でしょうかね。

今もしまたひとりで旅に出るとすれば、もう少し万全な態勢で挑みたいと思います。

できればかの因縁の(?)地、伊香保温泉へ。

あと、小林製薬の「トイレその後に」はとても素晴らしい商品です。

この記事を書いた人:藤代あかり(@akari_fujishiro)