日本の映画〜制限・規制の歴史〜

企画

今回も3000文字チャレンジという企画への参加記事となります。
というわけで、お題と企画のルールについてはこちらから↓

今回のテーマは「映画」。
前回のテーマ「趣味」で書こうかなと思っていた内容だったのですが、
今回のお題発表を受けて、今週の投稿としてみました。
それでは、記事本文は以下からどうぞ。

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古今東西で様々なジャンルがあり、娯楽の中でもひとつの大きなジャンルであるとも言える「映画」。

最近は映画を見る機会がグッと減っているなぁと感じるところではありますが、かつては1日に3本ハシゴして観ていた時期もあり、

私の中では「映画鑑賞」は「趣味」のひとつに分類されています。

恋愛ものからヒューマンドラマ、SFにミステリーにホラーにと、これまでもいろいろな作品を観てきましたが、

そんな風に多岐にわたる内容が扱われている映画でも

「何でもかんでも映像にしていいわけではないよな」

ということに、ふと思い至りました。

たとえばですが、作品内容によっては、鑑賞に際しての年齢制限などが定められています。

わかりやすいものだと、R15+とかR18+などですね。

これは映画のレイティングシステムと呼ばれるものなのですが、

各々のレイティングにはどんな意味合いが込められているのか?

現在のこうした表現内容と規制のシステムが出来上がるまで、どんな歴史があったのか?

今回の記事では上記の内容について、日本の現状とこれまでについてをご紹介していきたいと思います。

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現代日本における映画のレイティングシステム

現代日本での映画の年齢制限の枠(レイティング)は、

映画業界内で構成されている「映倫維持委員会」が定めた内容を、
映画業界外の第三者機関である「映画倫理委員会」が実施と管理を担っている「映画倫理規定」(通称映倫規定)に基づいて制定されています。

現行のレイティングの枠は「G」「PG12」「R15+」「R18+」の4つで構成されており、それぞれ

「G」→「General Audience(すべての観客)」の略号で、すべての年齢層の人が鑑賞可能
「PG12」→「Parental Guidance(親の指導や助言)」の略称。12歳未満(小学生以下)の鑑賞の際に、成人の保護者による指導や助言が必要とされるもの。R15+やR18+などには指定されていない性や暴力、残酷な表現やホラー表現の他にも、規定の年齢以下の青少年による飲酒・喫煙・運転などの表現に対しても適用されます。
「R15+」→「R」は「Restricted(観覧制限)」の略称。15歳未満の入場及び鑑賞を一切禁止するもの。「PG12」よりも刺激の強い表現のほか、いじめや暴力行為、放送禁止用語、反社会的な活動をしている集団を描いたものなどが対象となります。
「R18+」→「R」の正式名は「R15+」と同様。18歳未満の入場及び鑑賞を一切禁止するもの。R15+に該当する表現に加えて、激しい性的な、あるいは著しく反社会的とされる行為・行動に関する描写などが対象となります。

なお、映画を地上波で放送する際は、PG12作品はG指定の作品と同様の扱いを受けることも多く、ゴールデンタイムに放送されることもある一方、

R15+の場合は深夜帯に放送されたり、ゴールデンタイムに放送される際は制限に引っかかるシーンをカットされたりすることが多いようです。

また、これがR18+作品となってくると地上波での放送はおろか、宣伝のためにCMを流そうとすることすらほぼ不可能に近くなります。

作品の性質上、しょうがないといえばしょうがないのかもしれませんけどね……

ちなみに、R18+よりもさらに過激な内容の映画については「審査適応区分外」として、全国興行生活衛生同業組合連合会に加盟している映画館での上映は一切行えなくなります。

この場合はオリジナルビデオでのリリースか、上記団体に加盟していないミニシアターなどでの上映となるケースがほとんどです。

とはいえ、成人向けビデオアニメ、アダルトビデオや児童ポルノ、残酷ビデオなどは映倫の規定により上映を禁止されています。

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日本の映画に関する規制の歴史

ここまで現代日本での映画の規制に関して触れてきたところで、今度は過去の規制について辿っていきたいと思います。

なお、ここでは大きく戦前と戦後に分けて見ていきます。

戦前編

日本で初めて全国的に統一された映画の検閲が行われるようになったのは、1925年にフィルム検閲課が内務省保安局内に設立されてからのことでした。

それまでも「活動写真興行取締規則」(1917年)や「興行物及興行取締規則」(1921年)といった、規則はあるにはあったのですが、

内務省の保安局に専門の課が設立されるまでは、映画の検閲は各府県別に行われており、全国的に統一された基準というものがありませんでした。

ちなみにこのころは現代でいうところのG指定(全観客対象)の作品しか上映が許されておらず

着物の膝より上がはだけるような描写、キスシーン、流血表現も全てアウトという状態だったそうです。

ちなみに、この頃は天皇家について作品内で取り扱うことも厳禁だったとのこと。

なお、その後1939年に「映画法」が制定されると、映画は一時娯楽的な特色を失ってしまいます。

というのも、折しも時は日中戦争真っ只中。またこの後は第二次世界大戦・大平洋戦争へと繋がっていく時代です。

この当時は映画も軍国主義といった国策をうたったものに限られ、映画の製作や配給に関わる会社、映画を作り上げ上映するためのすべての部門につく人も、政府による技能審査をパスしなければならない事態となりました。

(この法律が施行される前に業界に関わっていた人は無試験で登録が降りましたが)

また、その他にもニュース映画や文化映画の上映を強制、外国映画の上映を制限する、台本の事前検閲といった動きも同時に見られています。

なお、この法律は終戦後、1945年の12月26日に廃止されています。

戦後編

終戦後の連合国軍による占領下では、GHQによって反占領軍的な内容をしたためた新聞記事などは規制されていた反面、

1939年に制定された「映画法」が廃止されたり、1946年に公布・1947年に施行された日本国憲法第21条での表現の自由の保証・検閲の禁止といった流れから、

映画の表現内容について、戦前と比べるとだいぶ自由が許されるようになってきたといえるでしょう。

しかし、いくら表現の自由をうたっても、何でもかんでも良しとするわけにはいきません。

1949年には「映画倫理規程」が制定され、この規定を管理・実施するための機関として「映画倫理規程管理委員会(旧映倫)」が作られます。

しかしこの時は今のように映画業界に関係しない第三者はこの組織・映画倫理規程の管理や実施には関わっていませんでした。

言い方は悪いですが、映画業界内部での忖度もズブズブな関係もあり得てしまう状況だった、というわけですね。

そんな忖度やズブズブな関係があったからというわけでもないでしょうが…

後に、1956年に公開された石原慎太郎さん原作の『太陽の季節』が公開された際に、旧映倫が映画業界内の人間のみで構成された組織であることの問題点が表面化してしまいます。

『太陽の季節』公開当時も各地で未成年者の観覧を条例で禁止する社会問題となったのですが、

『太陽の季節』と合わせて後の『処刑の部屋』『狂った果実』などを総称して「太陽族映画」なんて呼ばれる一つのムーブメントを起こす一方で、

未成年者の飲酒、性的な表現や暴力的な描写などが相まって、後にこの映画に影響された犯罪も起きてしまったことなども重なり、

1956年末には映画業界外の有識者に映画倫理規程の管理・実施を頼むための組織の編成が行われ、「映画倫理管理委員会(新映倫)」が発足する流れとなりました。

なお、この「映画倫理管理委員会」は2009年にかつての「映画倫理規定」に変わって「映画倫理綱領」が制定されたのに合わせて、「映画倫理委員会」に名前を改めています。

また、2017年には任意団体だったこの「映画倫理委員会」も、一般社団法人「映画倫理機構」に姿を変え、業務を移管しています。

ちなみに、映画に対して年齢による制限の概念が生まれたのは『太陽の季節』が上映された20年後の1976年で、

この頃は中学生以下の児童が鑑賞する際に成人の保護者の同伴を必要とする「一般映画制限付」(現在のR15+に近い)と18歳未満の干渉を禁止する「成人指定」(現在のR18+に相当)くらいしかありませんでした。

というのも、初期は映画に対して制限を設ける際の基準となったポイントが「性的な描写の有無」だったからです。

しかし後に神戸連続児童殺傷事件といった猟奇的な犯罪事件などの発生も相まって、暴力や殺人を始めとした反社会的な内容の描写に関しても制限を設ける流れとなり、

1998年には「一般映画制限付」が「R-15指定」に、「成人指定」が「R-18指定」に変更されるとともに、新しく「PG-12指定」が導入されました。

そして、その後映倫の改革、「映画倫理規程」に変わって「映画倫理綱領」が制定されたのに合わせて、2009年に現在の区分の形が完成しました。

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日本の映画と規制・レイティングシステムまとめ

というわけでここまで、映画のレイティングシステムや、現代の姿になるまでの規制の歴史などについて紹介してきました。

個人的には「R-15指定」「R-18指定がそれぞれ「R15+」「R18+」に変わっていたことが驚きでしたね。改定されていたことを知らなかったので…。

そんな形で、何かしらの発見や驚きがあるような記事であったことを願いつつ、今回はこの辺で締めたいと思います。

この記事を書いた人:藤代あかり(@akari_fujishiro)