漫画『タコピーの原罪』 現実はハッピーだけじゃ終われない

漫画

最近まで連載していたということもあり、読んだことはなくてもTwitterのタイムラインなどでタイトルだけは聞いたこともあるという人が多いであろう『タコピーの原罪』。

私自身も連載当時から毎週追っていたのですが、最終回を迎えた上で、読後からそのエンディングを自分の中でも消化するのに幾ばくか時間を要したので少し時間は空いてしまいましたが、

あえてこのタイミングで『タコピーの原罪』のレビューをあげてみようかと思います。

漫画『タコピーの原罪』概要

漫画『タコピーの原罪』はウェブコミック配信サイト『少年ジャンプ+』にて2021年末〜2022年3月まで連載されていた、タイザン5氏による日本の漫画作品です。

以下は『少年ジャンプ+』に掲載されている本作のあらすじとなります。

地球にハッピーを広めるため降り立ったハッピー星人タコピーは、笑わない少女しずかちゃんと出会う。どうやらその背景には学校のお友達とおうちの事情が関係しているようで…。無垢なタコピーが知るざらついた現実とは!?衝撃のヒューマンドラマ、ここに開幕!
引用元:[第1話]タコピーの原罪 – タイザン5

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漫画『タコピーの原罪』のレビュー・感想

連載終了後のインタビューにおいて、作者のタイザン5氏が以下のように答えている場面があります。

F田さん(※担当編集者)に「好きな題材で描いてみては?」と言われて、『ドラえもん』が好きなので「陰湿なドラえもんをやりたい」と思いついたことが最初です。
引用元:【第86回】『タコピーの原罪』タイザン5先生インタビュー

宇宙にハッピーを広めるために地球に降り立ったというハッピー星人のタコピーは、

確かにドラえもんが四次元ポケットから取り出すものたちのような魔法の道具を使って、母親からネグレクトされ、同級生たちからはイジメを受けているしずかちゃんを助けようと奮闘するのですが、

いかんせんタコピーがしずかちゃんのためにと起こす行動は的外れというよりも、むしろ事態を悪化させるような方向に動かしてしまう。

そういう意味でも確かに「陰湿なドラえもんだなぁ」などと最初の頃は思いながら読んでいたわけなのですが……

しかし物語が進むにつれ、しずかちゃんをイジメる筆頭だったまりなちゃんや、しずかちゃんをただ一人助けようとした東くんの背景も描かれるようになり、

ふと、正義の反対は悪ではなく、また別の正義である、といった主旨の言葉を思い出しました。

この物語には、100%の加害者や悪が出て来ないからです。また同時に、100%の被害者や正義の側面を持つキャラクターも出てきません。

冒頭、ネグレクトやイジメに遭ってきたしずかちゃんも、彼女をイジメるまりなちゃんも。そして、東くんですら、しずかちゃんを助けようという思いには善意だけでない裏の思いがあったりします。

唯一、タコピーだけがハッピーを信じて行動するわけですが、誰かにとっては一見良いように思える行動も別の角度から見ればマイナスに働いてしまう。

そもそも、最初にハッピーにしようとした人にとってもマイナスな結果を招いてしまったりと、まぁ実らない。

個人的には湊かなえさんの著作『告白』に出てくる”ウェルテル先生”を思い出すのですが、

現実に即して考えても、誰にとってもハッピーということってやっぱりないんですよね。

勧善懲悪、絶対の悪がいてそれが退けられる、不遇な境遇の人が最後まで100%被害者として、物語の最後にハッピーエンドを迎える、というのは、

フィクションだからこそスッキリした終わり方として良いのかもしれませんが、

十二分に現実がそんな風に善悪や加害者・被害者といった形でパッキリ割り切れないということをわかっていて、そのような物語に共感できない人ほど、

あるいは、本作のような作品に惹かれるところがあるのかもしれないなと個人的には思うのです。

もちろん本作にはネグレクトをはじめ、これでもかというほど中心キャラクターがいわゆる「毒親」のもとに育っているので、

そういう作品はもうお腹いっぱいだよ、という人にはあまり向かないストーリーかもしれませんけれど。

フィクションにこそ現実にはないスッキリしたハッピーエンドを求める人ではなく、

むしろスッキリしたハッピーエンドなんてただのご都合主義じゃない、現実はそんなに甘くない、と感じてイマイチそうした作品を受け入れられない人ほど、本作は向いているんじゃないかと思う次第です。

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漫画『タコピーの原罪』まとめ

というわけで、漫画『タコピーの原罪』を紹介してきました。

よかったらぜひこの機会に読んでみてくださいね。

この記事を書いた人:藤代あかり(@akarifujishiro)