最近『マンガPark』というアプリが続々と過去の名作たちをアップしてくださるので、ついつい嬉々として読んでしまいます。
特に白泉社というか『花とゆめ』作品のプッシュが強いので、実家でこうした作品に囲まれて育った私にとってはテンションブチ上がりです。
まぁアプリ開発元が白泉社なので当然といえば当然かもしれませんが(笑)
というわけで、今回はそんな『花とゆめ』作品の中でもつい最近配信が始まった、川原泉さんの『笑う大天使(わらうみかえる)』について紹介して行きたいと思います。
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漫画『笑う大天使(ミカエル)』概要
『笑う大天使(ミカエル)』基本情報
『笑う大天使(わらうみかえる)』は1987年に白泉社の漫画雑誌『花とゆめ』で連載されていた、川原泉さん作の中編少女漫画。
また、続編として主人公である3人の高校生である司城史緒(しじょうふみお)・斉木和音(さいきかずね)・更科柚子(さらしなゆずこ)にそれぞれフォーカスした3つの短編作品『空色の革命』『オペラ座の怪人』『夢だっていいじゃない』も発表されています。
『笑う大天使(ミカエル)』あらすじ
物語の舞台は史上最強の名門お嬢様学校・聖ミカエル(セントミカエル)学園。
司城史緒(しじょうふみお)・斉木和音(さいきかずね)・更科柚子(さらしなゆずこ)の3人は、それぞれに猫をかぶりながら、良家の子女としての学園生活を送っていました。
しかしとある出来事をきっかけに、お互いの本当の姿を知ることとなり、3人は交流を深めて行きます。
そしてそんな3人は、ある日戯れに作った薬品によって、彼女たちが「メンデレーエフの力」と呼ぶ超人的な怪力の持ち主となってしまいます。
時を同じくして巷では名門女子校に通う高校生を狙った連続誘拐事件が発生。
学園内にその犯人の一味が潜伏していることを知った3人は、やがて自らが手にした超人的なパワーを使って、この誘拐事件を解決して行きます。
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『笑う大天使(ミカエル)』のレビュー・感想
あるあるネタに笑う
物語の舞台である聖ミカエル学園は、明治36年(1903年)に創立された、由緒正しき名門お嬢様学校。
「よき妻 よき母」を育てるための教育に重きが置かれ、礼儀作法や清掃活動などには大変厳格である、という点は名門お嬢様校たるところでしょう。
また、聖ミカエル学園は学校の管理・運営者をキリスト教に関係がある組織が行なっており、キリスト教の教えに基づいた教育理念を掲げ、運営されている学校。ということでいわゆる「ミッション系」に該当する学校だとも言えるでしょう。
そのため、聖書やキリスト教の考えを教え、キリスト教の年間行事も執り行われます。
と、ここまで聞くと、この漫画が昭和の終わりに連載されていたことを踏まえても、今の時代にはないんじゃないの??という「架空の設定感」をひしひしと感じる方も多いんじゃないかなぁと思うのですが。
私個人としてはこれ、あながち「架空」でもないんですよね。
というのも、創立だとかどこの組織と縁の深い学校か、といった部分はさておいて、そういう学校に私自身が通ってたからなんですね。
といっても、幼稚園や小学校からではなく、大学も外へ出たので中学・高校のみなのですが。
で、そういう観点から見ていくと、ああ、あったあった!と懐かしくなる場面、というのが随所で登場するんですね。
シスターの方が学校にいたなぁ、とか、すれ違い様の挨拶が「おはよう」「こんにちは」じゃなくて「ご機嫌よう」だったな、とか。
朝は礼拝とはまでは行かなかったけど、ホームルームの前に全校放送で流れる聖歌を歌ったり、「父と子と聖霊の御名において」と主の祈りを唱えたりしたなぁとか。
高3まで宗教の時間というのが必修だったんですが、そのおかげもあって総合学習が始まったときに週5日×6コマという授業の時間割に収まりきらず、とある曜日だけ7コマとなって、部活ができる日が1日減って怒り心頭だったなぁとか。
まぁこの辺りまではミッション系学校あるあるなのかもしれませんが。
何より個人的に衝撃だったのが、生徒手帳の教育理念的なところに「よき妻 よき母となるために」といった文言が書いてあったことでしょうか。
『笑う大天使』は私が生まれた頃に連載されていた漫画であり、私が中学に進学したときはすでに平成も2桁年代に突入していたんですが、
入学以前からこの漫画を読んでいた身としては
「今の世にもこんな学校があるんだなぁ」
と妙に感心したことを覚えています。
川原泉さんがこの漫画を描かれた背景には、教員採用試験を某女子校で受けた際の「勉学と良妻賢母、どちらを優先しますか」という問いに対して「勉学」と答えて不合格を食らい、お嬢様学校コンプレックスに陥ったこともあるかとは思います。
そうして『笑う大天使』を描くにあたってどの程度こうした学校に取材をされていたのかは分からないのですが、設定が結構リアル、という点では、ストーリー自体の面白さとともに、楽しめるポイントだと思います。
随所に散りばめられる作者の博識さとユーモア
他の作品も読まれているファンの方ならご存知かと思いますが、
「生活費の中で本代に1番お金をかける」
とコメントする、書店に行くたびに2万円ほど本を購入していたというほどの読書家である川原泉さん。
そんな彼女の漫画の中には、心理学に哲学、修歴史に文学と、幅広いジャンルからの引用が見られます。
他方で、ただそうした引用を行なうだけではなく、わかりやすい解説が添えられていたり、クスッと笑える文言・パロディが添えられていたり、といった川原泉さんらしい要素は本作でも随所に登場します。
たとえば、世界最古の長編小説で日本文学の中でも最高傑作との呼び声も高い『源氏物語』。
本作の中では主人公の3人が『源氏物語』を読んでレポートを書く、というシーンが当時の絵するのですが、
「マザコンでロリコンで不倫大好き」「色恋以外のことをもっと考えた方がいい」「マルクスの資本論を読ませたい」
と光源氏の評価はかなりボロボロ。
紫式部先生や『源氏物語』を熱心に研究されている方には怒られそうではありますが、でもわかるなぁ、そのセンス好き!と思わず言いたくなってしまいます。
個人的にオススメなのは続編3作品
『笑う大天使』は本編ももちろん面白いのですが、個人的には3人の主人公それぞれにフォーカスした続編となる短編3作品の方がより好きだったりします。
どちらかというとゆるめの印象の絵と、基本は楽天的な主人公たち。本編の方ではほんわかのんびり、ゆったりまったりな雰囲気で進んでいた物語ですが、
これが短編になるとそれぞれの女の子たちが深掘りされ、思わずホロリと泣けてしまうのです。そして後味の悪さもほとんどない。
(柚子に焦点を当てた「オペラ座の怪人」についてはやや審議が必要かもしれませんが)
本編で彼女たちの冒険譚を楽しんだ後は、ぜひ続編でウルッと。文字通り、笑いあり涙あり、という作品になっています。
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漫画『笑う大天使(ミカエル)』まとめ
というわけで、漫画『笑う大天使(ミカエル)』を紹介してきました。
ちなみに『笑う大天使(ミカエル)』ですが、2006年に実写映画が公開されています。
原作ファンとして個人的にはちょっと首を傾げざるを得ない出来だった、という所感ではあるのですが、
(かつて怒りのタケをぶつけまくった『秘密 THE TOP SECRET』ほどの酷さではない)
上野樹里さんや関めぐみさん、平愛梨さんなど豪華なメンバーが揃っておりますので、もしよかったらこの機会に観てみてください。
Amazonプライム会員の方はプライム・ビデオにて鑑賞することが可能となっています。
この記事を書いた人:藤代あかり(@akari_fujishiro)