映画『告白』 後味の悪さが味となる作品

映画

事件は起きるものの、最後には無事に解決し、読者がスッキリと、満足感とともに本を閉じることができるのが、ミステリー小説としてはこれまで多かった傾向かと思います。

反して、事件の顛末と解決までのことだけを描くのではなく、この事件の背景に潜む人間の闇深いともいえる真理を巧みに描写し、

嫌な汗が止まらなくなるような後味の悪さの残るミステリー小説も最近は世に出ることも多くなり、これらの小説は「イヤミス」などと呼ばれています。

そんなイヤミス小説の代表的な作家さんの名前として上がることが多い1人が湊かなえさんですが、特にデビュー作の『告白』はとにかく衝撃的といえるものでした。

発売当時、手に取って読んでみた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そしてこの『告白』は2010年に映画化もされており、かなり話題になったと記憶しています。

今回はこの映画版の『告白』について紹介していきたいと思います。

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映画『告白』概要

映画『告白』基本情報

『告白』は、湊かなえさん原作の同名ベストセラー小説を、2010年に映画化した作品。

娘を殺され、生徒を相手にその事件の真相に迫っていく中学教師の主人公を松たか子さんが演じており、第30回日本アカデミー賞で4冠を達成。

ただし、本作は少年犯罪や家庭内暴力、イジメといった過激な内容や描写を扱っていることから、R15+指定を受けています。

映画『告白』あらすじ

とある中学校の1年B組。学年末の終業式を終えて雑然としたホームルームで、教壇に立つ担任の森口悠子(もりぐちゆうこ/松たか子さん)は静かに、自身がこの3月で教員を辞めることを告げ、

続けてシングルマザーとして大事に育てて来た娘をめぐる悲しい事件について、”告白”を始めました。

「わたしの娘が死にました。警察は事故死と判断しましたが、娘は事故で死んだのではなくこのクラスの生徒に殺されたのです」

静まり返る教室の中で、森口は2人の犯人をそれぞれ少年Aと少年Bとして名を明言しないものの、クラス中に誰であるかが伝わる形で事件の顛末を話します。

ただ、警察は事故として処理したため、今更蒸し返すつもりもないということ。そして、少年法で守られている2人に対してある”仕掛け”を施したことを最後に告げ、森口は学校を去りました。

迎えた4月、1年B組の生徒たちはクラス替えも行われないまま進級し、新たな担任である熱血教師・寺田良輝(てらだよしき/岡田将生さん)を迎えます。

ただし、昨年の事件について一切知らされていない担任の元、クラスには差別という名の新しい”秩序”が出来上がっており、

やがてそれは少年Aと少年Bの2人を追い詰めていく……

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映画『告白』のレビュー・感想

本作に関しては原作小説を以前に読んでいたのですが、章ごとに語り手が変わりそれぞれの人物が「告白する」というオムニバス形式を取っている原作を踏襲しつつ、映画向けにそれぞれの語りの比重を調整した、という作りになっているな、とまずは感じました。

原作の内容が内容なだけに、スッキリとした後味を感じることはできない終わり方になっています。なので、後味の悪さが残る作品が苦手な方には向かない原作・映画といえるでしょう。

ただ、自分以外の存在は自分のために存在する道具ではない、という当たり前の他人に対する敬意の欠如、衝動による行動が生んだ結果。そしてそれによる、残酷ともいえる因果応報。

「怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。 深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。」

というのは、ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェの言葉ですが、森口の踏んだ、犯人の少年たちを司法の手に委ねず追い込んでいく復讐の手順は、ふと上記の言葉を思い出させるものでした。

とはいえ、彼らはまた少年法で守られる存在であるからして、復讐で幕を開けた本作は、最後は更生に帰結するようになっています。

その点は、以前当ブログでも紹介した『リリイ・シュシュのすべて』よりはまだ救いの余地が残されている、ともいえるような気がします。

ただ、更生に帰結しているとはいえ、そこにはお涙頂戴的なストーリーはなく、ああよかったね、と物語を閉じることはありません。

これから少年たちも森口自身もどのように過ごしていくのか、想像せずにはいられない終わり方をしているのが本作の魅力なのではないかと感じているのですが、

森口を演じた松たか子さんを始め、それぞれの俳優さんたちの怪演ともいえる演技が光る作品だったと思っています。

映画『告白』まとめ

というわけで、映画『告白』を紹介してきました。

ちなみに映画『告白』ですが、Amazonプライム会員はプライム・ビデオで鑑賞することができます。

よかったらぜひこの機会に観てみてください。

この記事を書いた人:藤代あかり(@akari_fujishiro)