アニメ『91Days』 アメリカの禁酒法時代を舞台とした復讐譚

アニメ

毎シーズンいろんなアニメが放送されていますが、その多くは原作がある、もしくは多岐にわたるメディア展開をしているものも多いです。

もちろんそうした作品もそうした作品でいろんな楽しみ方ができるのですが、

他のメディアから情報が得られないことも相まって、ストーリーがどう展開していくのか最後まで読めない。

そうした面白さが、完全オリジナルのアニメにはあると思います。

というわけで、今回はそんな完全オリジナルアニメの中でも特にオススメしたい、『91Days』を紹介していきたいと思います。

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アニメ『91Days』概要

『91Days』基本情報

『91Days』は2016年7月〜9月にMBS・TBS・CBC・BS-TBSなどで放送された日本のテレビアニメです。

アメリカの禁酒法の時代を舞台に、マフィアに両親と弟を殺された青年・アンジェロが、家族の仇であるヴァネッティ・ファミリーに復讐していく91日間を描いた本作品は、

主人公のアンジェロを近藤隆さんが、ヴァネッティ・ファミリーのドンの息子を江口拓也さんが演じています。

※アメリカの禁酒法:1920年〜1933年にアメリカ合衆国憲法修正第18条のもと施行されていた、消費のためのアルコールの製造・販売・輸送が全面的に禁止された法律。

『91Days』あらすじ

7年前の自身の誕生日の夜に両親と弟を殺されたアンジェロは、アヴィリオ・ブルーノに名前を変え、孤独に生きてきました。

そんなアヴィリオのもとにある日、アヴィリオではなく本名のアンジェロ・ラグーザ宛に、差出人不明の一通の手紙が届きます。

その手紙の中に書かれていたのは、彼の両親と弟を殺した人物たちの名前。

復讐を決意したアヴィリオは故郷のローレスに戻り、親友・コルテオが作った密造酒を手土産に、手紙に書かれた人物の一人であるネロ・ヴァネッティに近づきます。

このネロ・ヴァネッティは、ローレスの街を牛耳っているマフィア、ヴァネッティ・ファミリーの長男で、

アヴィリオが受け取った手紙の中に書かれていた両親と弟の仇のうちの1人でした。

手紙には他にもヴァネッティ・ファミリーのドン、ヴィンセント・ヴァネッティと、ネロの親友であるヴァンノ・クレメンテの名が記されていました。

コルテオが作った密造酒を手土産にネロに近づくことに成功したアヴィリオは、ネロの信頼を得て組織の中でその地位を固めながらも、

裏でヴァンノを筆頭としたネロの部下たち、そしてネロの弟のフラテを直接・間接的に死に追いやり、ネロを孤立させていきます。

そして、家族を失ったあと長く自分の兄弟のように接してくれていた親友・コルテオを自らの手で殺す目に遭いながらも復讐を進めていったアヴィリオは、

やがてこの復讐劇のキッカケとなった手紙の差出人であり、自分の家族の仇でもある4人目の人物、ガンゾ・アラリーにたどり着きます。

ヴァネッティ・ファミリーの中でも年長の幹部で、ネロを始め多くの部下から「叔父貴」の愛称でもって親しまれていたガンゾは、実はファミリーの乗っ取りを画策しており、

ローレスを含むシカゴ一帯を牛耳る大マフィア、ガラッシア・ファミリーと裏で繋がっていたのでした。

アヴィリオはこのガンゾの計画に乗ったフリをし、ヴィンセントの悲願であるオペラ劇場のこけら落としの日を迎えますが、

彼はあろうことか、その日オペラ劇場を訪れていたドン・ガラッシアを殺害。

ガンゾの計画は崩れ去り、ヴァネッティ・ファミリーのせん滅の命令がガラッシア・ファミリーの後継者・ストレーガによって言い渡されます。

こうして、家族の仇を取る=ヴァネッティ・ファミリーのすべてを破壊する、というアヴィリオが立てた復讐は果たされました。

しかし、アヴィリオの胸に去来したのは、彼が得られると思っていた満足感でも「生きる理由」でもなく、ただそこには空虚感しかありませんでした。

そんなアヴィリオを、ファミリーで唯一生き残ったネロが拉致し、2人は旅に出ます。

やがてたどり着いた海。

アヴィリオは旅の途中で聞かれた、ネロを殺さなかった理由、に答えます。

「お前を殺したくなかったからだ」

アヴィリオの背に向けられた銃口。
青空に響く銃声と上がる白煙。
車に戻ったネロと、助手席に置かれたアヴィリオの好物である缶詰。
笑顔のネロと走り出した車。
そんなネロとすれ違ったのは、彼を追うガラッシア・ファミリーの車。

そして、砂浜に残された足跡がやがて波にさらわれ、消されていく中、物語は幕を閉じます。

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『91Days』のレビュー・感想

このアニメは実は出演されている声優さん目当てで最初見始めたのですが、毎週観終わる時にはもう早く翌週の放送分が待ち遠しくて仕方がなくなるほど、久しぶりに大ハマりした作品でした。

その理由ですが、アヴィリオが復讐を遂げていく中で、誰が手紙の差出人/黒幕なのかが解き明かされていくミステリー的な要素と、

最終回まで「アヴィリオが果たしたかった復讐の完成形」(家族を殺した実行犯の死ではなくファミリーを潰すこと)が明かされなかった、という点が大きかったです。

また、ファミリーを壊滅に追いやりながらも結局ネロを生かしておいた部分の描写が本当に素晴らしかったですね。

まるで生ける屍のように孤独で空虚な日々を生きてきたアヴィリオの感情表現は乏しく、親友・コルテオの死に際してもその悲しみはほとんど表面化されなかったのですが、

最終回でネロに復讐のことで詰め寄られた時に、そんなアヴィリオの感情が爆発するんですね。

「俺をあの時殺してればよかっただろう!!」
「7年前のあの夜、お前が俺を撃っていれば……」

実はアヴィリオの家族殺害の現場にいた当時14歳のネロは、家から逃げていく幼いアヴィリオに気付きながらも、彼を撃つことができず、それが心残りでもあったんですね。

そして、アヴィリオが明かした、ネロを殺さなかった理由。

相手が憎き仇であることを知りながら、芽生えたそれ以外の感情。

そして、銃声が鳴り響き、ネロは1人で旅立っていく。

本作品の最後、結局ネロがアヴィリオを撃ったのか(殺してしまったのか)といった明確な描写はないため、その解釈は観た人に委ねられるのですが、

私個人としては、ネロはアヴィリオを撃ったんじゃないかと思っています。

結局、14歳の自分が恐れて目を背けた罪が、アヴィリオを生み、自身の家族と部下を巻き込んでいく悲劇を生んだわけで。

そして、あの夜アンジェロを家族と一緒に行かせてあげることができなかったから、アヴィリオ自身も長く苦しんだわけです。

そんな彼をせめて救うことができるとしたら、今この時に彼の復讐を咎めて生かし続けることよりも、許して楽にしてあげることを選ぶのではないかな、と、そんな風に感じています。

あなたはこの結末をどんな風に捉えるか。

ぜひご自身の目で確かめてみていただきたいです。

また、アニメ本編を観終わったあとはぜひ小説版を合わせて手にとっていただきたいですね。

というのも、アニメ本編では語られなかったエピソード、

特に新参者ながら側近のように大事にされているアヴィリオへの嫉妬のような感情を抱くバルベロが、なぜここまでネロへの忠誠心が強いのか、について語られている部分は必読です。

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アニメ『91Days』まとめ

というわけで、アニメ『91Days』を紹介してきました。

ちなみに『91Days』ですが、アニメ本編についてはAmazonプライム会員はプライム・ビデオで鑑賞することができます。

また、DVD・Blu-rayなどの映像ソフト、並びに上下巻セットの小説版はAmazon・楽天・Yahoo!ショッピングのほか、

アニメイトオンラインで購入することも可能です。

よかったらぜひこの機会に観てみてください。

この記事を書いた人:藤代あかり(@akari_fujishiro)