映画『半落ち』あらすじ・感想・レビュー

映画

藤代あかり(@akari_fujishiro)です。

「人は、魂は、いつ死んだとされるのか」

この問いに対して、あなたならどんなふうに答えるでしょうか。

そのことを考えるにあたって、今回は『半落ち』という映画を紹介していきたいと思います。

[sponsered link]


映画『半落ち』概要

『半落ち』基本情報

『半落ち』は横山秀夫さんの同名小説を原作とする、2004年に公開された映画です。

アルツハイマー病をわずらっていた妻を殺してしまった、寺尾聰さん演じる元警察官・梶聡一郎と、彼が出頭する前の「空白の2日間」をめぐる物語。

ちなみに「半落ち」とは警察用語の一つで「一部自供した」状態を表します。

なお、「すべてを自供した」という状態を表す「完落ち」という言葉もあります。

『半落ち』あらすじ

群馬県警本部の捜査一課強行犯係で指導官を務める志木和正警視は、

連続少女暴行事件の被疑者を確保しに向かった強行犯係の刑事たちからの報告の電話を待っていました。

しかし、先にかかってきたのは交通課からの連絡。内容は、川城中央警察署に、現職警察官の梶聡一郎警部が、

「私、梶聡一郎は、3日前、妻の啓子を、自宅で首を絞めて、殺しました」

と自首してきたということ。そして対応に当たった交通課がどうしたら良いのかと判断に困った結果、志木に判断を仰いだ、というものでした。

志木は梶を刑事課の任意取調室に連れて行くことと、遺体の確認が取れ次第緊急逮捕の手続きをとるように助言し、

本来捜査に当たっていた連続少女暴行事件の犯人が農薬を飲んだことで搬送されたという病院に向かいました。

後日、結局梶の担当を命じられた志木は川城中央警察署で、警務課の栗田とともに取り調べを開始します。

梶聡一郎は全面的に自身の罪を認めており、犯行を行なった10月4日の行動についても自供します。

梶の告白から、10月4日が急性骨髄性白血病を患って亡くなったひとり息子の命日であったこと。朝から妻と2人で墓参りに行ったものの、アルツハイマー病を患っている妻はそのことを忘れてしまい、墓参りに行っていないと半狂乱になったこと。

そして、母として息子・俊哉のことを忘れてしまう前に死にたい、殺して欲しいと泣く妻の願いに応える形で梶が彼女を殺害したことが判明しました。

警察としては現役の警察官が犯罪、しかも殺人事件を起こしてしまったことは問題となっており、記者会見を開くに当たって、

被害者からの願いを受けて行なった、いわゆる「嘱託殺人」であることが記者会見を担当する警務部長に知らされました。

現職の警察官の犯罪とはいえ、この内容なら多少はマスコミをかわせるだろうとの思いだったのですが、

蓋を開けてみれば注目されたのは、梶が妻を殺してから出頭するまでの「空白の2日間」のことでした。

2日間というこの期間は妻の亡骸に寄り添っているというには長すぎる時間。不思議に思われても仕方がない部分はあります。

しかし、犯行自体は素直に認め、捜査にも協力的な梶ですが、不思議とこの「空白の2日間」のことだけは口をつぐみ、黙秘権を行使するのです。

朝の記者会見では、この空白の2日間のこと以外のわかっていることだけが報告され、志木には課題として、夜の会見までにこの空白の2日間の謎を解明するタスクが残されました。

しかも、梶のコートのポケットからは歌舞伎町のポケットティッシュが発見されており、空白の2日間に歌舞伎町へ行った可能性が浮上してきました。

出頭する前に歌舞伎町に行っていたとあっては、たとえ嘱託殺人であったことが事実としてあっても、マスコミ向けには切り抜けにくい事情。

家宅捜索に参加した志木はそこで、家の鴨居にかすかな傷跡を見つけます。

引き続きの取り調べの中で、梶が自殺しようとしたことを認めたため、夜の記者会見ではこの事実が前面に押し出されました。

しかし、相変わらず空白の2日間と歌舞伎町に関して、梶は口をつぐんだままです。

翌朝の朝刊に、新幹線のホームにいる梶の目撃情報がスクープとして掲載されます。

志木の上官たちは、なんとか「梶は死に場所を求めて2日間県内をさまよっていた」という方向に持っていきたいと考えます。

そうしたお仕着せの言葉を言わせることに志木は抵抗を示しますが、空気を読んだ梶は口裏を合わせました。

「完落ち」したと判断された梶の身柄は検察庁へ移され、上層部に歯向かった志木は捜査の担当から外されます。しかし、梶が何故空白の2日間について隠したがるのか、その裏に何か大事な何かがあるのではないか、と独自調査を始めます。

検察庁で梶の担当検事となった佐瀬銛男もまた、警察側から提出された調書を見て、本当に自殺を考えていたならなぜすぐに梶は自供しなかったのだろうかと怪しみます。

しかし、横領容疑をかけられている検察次官の身柄が警察によって別件で拘束されたことにより、佐瀬もまた上司から、梶の件を深掘りしないよう指示されてしまいます。

検察次官の横領容疑の件は警察では検挙しない代わりに、梶の件も、という裏取引が行われたのです。

県警に対して「梶は東京に行っていたのではないか」とぶつけるのを、東洋新聞前橋支局の女性記者・中尾洋子が聞きつけ、彼女もまた調査に乗り出します。

そんな中尾に対し、岩村県警刑事部長は連続少女暴行事件の犯人の名前のメモを渡します。スクープをやるからこれ以上掘り下げるな、という意味のものです。

しかし、中尾も、そして志木・佐瀬の両名も、それぞれに調べを進めていきます。

そして、1か月後に始まった裁判。

第二回公判で、担当弁護士の植村は、息子の死ととある新聞記事について触れました。

「命をありがとう」

と題されたその記事は、世田谷区の19歳の男性・池上一志という青年が、13歳の時に骨髄性白血病を患ったものの、14歳の時に適合する骨髄が見つかり、命を繋いでもらったことを記したもので、記事の最後には、今彼が新宿のラーメン屋で働いている、とも記載されています。

実は梶と妻の啓子は、一人息子の俊哉が亡くなったのち、この件を受けて夫婦で骨髄バンクに登録していました。

ドナー提供者と患者は個人情報の取り扱いの兼ね合いから、互いに互いのことを知らされることはありません。

しかし、一度だけ夫である梶の骨髄が一致して提供したことがあること。そして池上の記事内容から、梶の骨髄の提供相手が池上青年なのではないかと考えていた啓子は、アルツハイマーがひどくなる前から彼のことを探していたのです。

植村はさらに続けます。

「あなたは51歳になったら死ぬ気ですね」

実は骨髄バンクのドナー登録には20歳〜50歳までという年齢制限があったのです。つまり51歳になると、登録が抹消されます。
(※現在は55歳まで上限が引き上げられています)

現在49歳の梶が啓子を殺害した後にあとを追わなかったのは、この骨髄バンクの登録が抹消されるまで待ちたいという思いからでした。

しかし、梶は植村の言葉に「知りません」とまだしらを切り続けます。

それでも、妻が池上青年に一人息子の俊哉のことを重ねて見ていたこと。なんとか会いたいと願っていたこと。

それらのことが啓子によって記された大学ノートは、検察側に立つ佐瀬によって提出されてしまうと、梶も黙秘を続けることは出来なくなってしまいます。

梶は、妻が亡くなった後に見つけたノートから彼女の意思を汲み取り、空白の2日の間に、池上青年に会いに行ったのです。

そして、梶は「自分の骨髄提供者が殺人犯である」という不名誉が発覚しないようにと、池上青年に関することを黙っていたのでした。

傍聴席には、志木とともに、彼に連れられた池上青年の姿もありました。

裁判官特例判事補の藤林圭吾に「なぜ啓子を生かすことを考えなかったのか」と問われた梶は、改めてこう答えます。

「壊れていく、魂がなくなっていく妻を不憫に思ったから」

親にとって我が子を失う悲しみはなにものにもたとえられないほど大きなもの。骨髄性白血病によって1度のみならず、アルツハイマー病によって今度は2度までも妻の啓子が我が子を「亡くす」ことを、味わって欲しくはなかったのだと。

懲役4年、執行猶予なし。

裁判の後、刑務官・古賀誠司の護送車に乗った梶は、移送の途中でとある公園の前に停車された車の中から、志木と池上の姿を目にします。

「い、き、て、く、だ、さ、い」

51歳になったあかつきには刑務所内で自殺をしようとも考えていた梶は、遠くから自分に声をかけてくれる池上青年の唇の動きを読み取り、その言葉に励まされました。

そして敬礼する志木に礼を返しながら、梶は啓子と俊哉と3人で、幸せだった日々のことを思い出していました。

[sponsered link]


『半落ち』のレビュー・感想

「人は、魂は、いつ死んだとされるのか」

冒頭でも書きました上記の問い。こちらに対して、こんな回答を耳にしたことがあります。

「人は体が死んだ時に1度目の死を迎え、その人のことを思い出してくれる人がいなくなった時に2度目の死を迎える」

この映画を観た後に、真っ先に思い出したのがこの言葉でした。

妻が一人息子・俊哉を「2度失う」ことを防ぎたかったのと同時に、忘れられることによる「俊哉の死」もまた、回避したかったんじゃないだろうかということをふと考えたからです。

全体に、おそらく寺尾聰さんが演じられていたからこそという部分が強かった映画のように見受けられます。

違う役者さんが演じていたら、もう少し辛口の評価になっていたような、そんな気がするのです。

ただ、魂があってこその命と裁くことは誰にもできない、と、裁判長が情状を酌量しすぎない判決を下したのもよかったとも思います。

原作とは細かなところが異なるようなので、そちらを読んでみるとまた違った感想を抱きそうですが、

上記の内容も踏まえ、自分が持っている死生観について、考えさせられる作品だと感じました。

[sponsered link]


映画『半落ち』まとめ

というわけで、映画『半落ち』を紹介してきました。

ちなみに『半落ち』ですが、字幕版・吹き替え版ともにAmazonプライム会員はプライム・ビデオで鑑賞することができます。

よかったらぜひこの機会に観てみてください。

コメント