前回『笑う大天使(ミカエル)』という作品を紹介した時にもちらっと触れたのですが、
最近『マンガPark』というアプリが続々と過去の白泉社の名作たちをアップしてくださるので、ついつい嬉々として読んでしまいます。
今回はそんな中でも私が大好きな『秘密 -トップ・シークレット-』の作者である清水玲子さんが、アンデルセン童話・人魚姫をモチーフとして描いた『月の子 MOON CHILD』を紹介していきたいと思います。
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漫画『月の子 MOON CHILD』概要
『月の子 MOON CHILD』基本情報
『月の子 MOON CHILD』は、1988年〜1992年にかけて白泉社の雑誌『LaLa』にて連載されていた、アンデルセン童話の「人魚姫」をモチーフとした清水玲子による少女漫画です。
『月の子 MOON CHILD』あらすじ
華やかなりしニューヨークの街で、かつては「天才少年」と賞賛されながらも現在は売れないダンサーであるアート・ガイルは車の運転中に、急に車道に飛び出してきた男の子を助けようとして、事故を起こしてしまいます。
ただ、飛び出してきた男の子は特に怪我もなく無事だったのですが事故のショックによるものなのか記憶喪失状態。
アートはそんな少年に「ジミー」と名付け、奇妙な共同生活を送ることになります。
ちなみに実はジミーは人間ではなく、人間によく似た姿形をしているものの、その正体は「人魚」
ジミーを始め多くの人魚たちは産卵の時期を迎え、遥か遠い宇宙から泳いで、故郷である地球に戻ってきていたのでした。
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『月の子 MOON CHILD』のレビュー・感想
人魚姫といえば、ディズニーのリトル・マーメイドを思い出す方も多いと思いますが、こちらの作品は人魚姫と王子様とが結ばれるハッピーエンドで締め括られるものの、
アンデルセンの童話では人魚姫の王子様への恋は叶わず、人魚に戻る手段も自ら捨ててしまった人魚姫は水泡に帰してしまう、というエンディングを迎えてしまうことは、ご存知でしょうか。
今回の『月の子 MOON CHILD』においてはこのアンデルセン童話版のストーリーがモチーフとなっています。
さて、作中登場する人魚族にはこんな戒めがあります。
「宇宙魚である人魚族と、地球の土着の人間がいっしょになると、種と星を滅ぼす」
それはジミーの母親・セイラは600年前に人間の王子様に恋をし、仲間を裏切ってしまいました。このことの、人間にとっては”超常現象”や”超能力”の類ともいえる力も相まって人魚たちは「魔女狩り」にあった結果、滅亡の危機に瀕していることからも来ているのですが、
さらに人魚族の長老は、セイラの子どもが人魚とではなく人間と結ばれてしまえば、もう2度と人魚が繁殖のために帰って来られないほど、人間をはじめとした生物が棲めなくなってしまうほど、地球は荒廃し、滅びるという予言をするのです。
ですが、記憶を無くし、彼の元で過ごすうちに、ジミーはどうしようもなく人間であるアートに惹かれていきます。
そこに登場する、かつてセイラを想いながらも別の人魚と子孫を残した者を父に持つ人魚族のショナ、ジミーの兄弟たちであるティルト・セツのそれぞれの思惑と恋とが複雑に絡み合っていく過程。
そして、ジミーの恋を阻むように、長老の予言の後押しをするかのような、世界を揺るがす数々の歴史的な事件・事故が引き起こされていきます。
それはやがて、1986年に起きた歴史的事故へとつながっていき……
根底にあるのは人を愛する気持ちだけなのに、それがどうしても周囲を、種族を巻き込む悲劇の引き金となってしまう。
そんな残酷だけれども、美しくも繊細な物語として描かれている。そのことが、本作の魅力につながっています。
漫画『月の子 MOON CHILD』まとめ
というわけで、漫画『月の子 MOON CHILD』を紹介してきました。
私自身は作者の清水玲子さんの作品だと『秘密 -トップ・シークレット-』との出会いの方が先で、今でも連載を追いかけているお気に入りの作品のひとつなのですが、
『月の子 MOON CHILD』も負けず劣らず大好きな作品です。
よかったらぜひこの機会に読んでみてくださいね。
この記事を書いた人:藤代あかり(@akari_fujishiro)