映画『白ゆき姫殺人事件』 真実は人の数だけあるかもしれない

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日頃からSNSを利用していると、その使い方をどうするか、トラブルや炎上についても身近な問題として考える機会が多いように思います。

どのように情報を得て、どんな風に自分の中でその情報を受け止めるか、それが正しい情報なのか判断する。

これはSNSだけではなく、最近はテレビをはじめとしたマスメディアに対しても感じますが、

情報の取捨選択を誤ってしまうと、デマを信じてしまったり拡散してしまったりして、自分や他者が不利益を被る、追い詰められる状況を作ってしまいかねないということも起こりかねません。

もちろん、四六時中このことを意識している人の方が稀だとは思いますが、忘れずにいたいところですよね。

そんなことを改めて考える機会の一つとして、今回は映画『白ゆき姫殺人事件』について紹介していきたいと思います。

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映画『白ゆき姫殺人事件』概要・あらすじ

映画『白ゆき姫殺人事件』は、『告白』などの代表作を持つ湊かなえさんが2012年に発表した同名サスペンス小説を原作に映画化したものです。

本作の主人公は、城野美姫(しろのみき/井上真央さん)という、地味な存在の女性。

美姫は勤め先の日の出化粧品で同期だった美人社員・三木典子(みきのりこ/菜々緒さん)が何者かに惨殺される事件が起きた際に、疑惑の目を向けられることに。

テレビのワイドショーによる美姫の周辺人物たちへの取材から飛び交う驚きの証言内容。番組の報道内容に触発され、ネット上に飛び交う流言飛語。

そうした、加熱報道やネット炎上といった現代社会が抱えている闇ともいえる部分を描き出していくような作品となっています。

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映画『白ゆき姫殺人事件』のレビュー・感想

湊かなえさんといえば『告白』は原作→映画の順で追っていて、本作は映画観賞後原作は未読、という状態なんですが、

『白ゆき姫殺人事件』の小説をパラっとめくってみた感じだと、登場人物ごとの視点にフォーカスして、事件の真相に迫っていく、という大まかな章立ては『告白』に似ているかなぁ、という印象を受けました。

とはいえ『告白』よりほ本作の登場人物たちの方がもう少し毒気がないかもしれません……たぶんですが。

しかしながら、この毒女ってほどではないけどイヤ〜な感じの女性を演じる菜々緒さんはわりとハマってたかな、と思います。もちろんいい意味で(?)

さて、前置きはこれくらいにしておくとして。

この映画を観たときに真っ先に思い出したのは、愛知県豊田市議を含めた複数の人物に、茨城県の常磐道であおり運転をしたとして摘発された車に乗っていた「ガラケー女」という事実無根のデマを流された女性のことでした。

それくらい、この作品に出てくる美姫のような追い詰められ方は、十分に現実で起こりうることだ、とも言えるのかもしれません。

ただ、よくあるネット警鐘作というだけの受け取り方でいいのかな、と感じる部分もあり。

たとえば、映画内に登場するワイドショーのメディアリテラシーの低さ。

あたかも美姫が犯人であるかのように過剰演出とともに番組内で取り上げながら、最後には事件の結末と美姫への犯人扱いに対する簡単なお詫びを述べたのみだったわけですが、

加熱・偏向・デマ拡散。簡単でもお詫びコメントを出すだけまだマシなのでは…?と思わせるあたり、まさにあるあるで、かなり現実に即しているように思います。

とはいえ、ネットであれメディアであれリテラシーの問題はそれとして考えなければならないけれど、本当のテーマはそこじゃないのかもしれません。

某探偵マンガの名台詞に「真実はいつもひとつ!」とありますが、真実とは実際のところ、各人が個別に知覚しているものが、その本人にとっては真実なんじゃないでしょうか。

本作でもワイドショーの取材に対して口にしたそれぞれの人物の「美姫の印象」、そして美姫本人にも「自分とは」というものが出てくるわけですが、

そのどれもが(もしかしたら美姫自身の自分像を含め)、その印象を抱いている本人にとっては”真実”ではあるけれど、どれもが完成品の真実ではなくて、一部でしかない。

だから、さまざまな人のさまざまな真実を繋げてみても、パズルのようには綺麗に完成しない。

というのも、そもそも皆全く別のパズルのピースを持っていて、それで一つの完成図ができるわけがないから。

だからこそ美姫は、ワイドショーに出てくるさまざまな人の美姫像を見るにつけ、自分が知っている自分と繋がらずに「私は、私がわからない」という心境に陥ったのかな、と思うのです。

そして、真実というのは誰かの持つその人の真実によって、胸先・舌先三寸でコロコロと変わる、移ろいやすいものなのかな、ということも同時に本作を通して考えました。

……と、ここまで何やら難しいっぽいことも書きましたが、映画自体はそこまで重く考えさせる作りにはなっておらず、エンタメ的にまとめられていて観やすいんじゃないかな、と思います。

湊かなえさんお得意の「イヤミス」らしさはありつつ『告白』よりはライトに、というのが全体を通しての印象です。

映画版とはエンディングが異なるようなので、時間が取れたら原作も読んでみようと思います。

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映画『白ゆき姫殺人事件』まとめ

というわけで、映画『白ゆき姫殺人事件』を紹介してきました。

ちなみに『白ゆき姫殺人事件』ですが、Amazonプライム会員はプライム・ビデオで鑑賞することができます。

よかったらぜひこの機会に観てみてください。

この記事を書いた人:藤代あかり(@akari_fujishiro)