人の記憶には、頭で覚える「陳述的記憶(ちんじゅつてききおく)」と、体で覚える「手続き記憶」の2種類がある、といわれています。
たとえば難しい漢字、計算の仕方などを覚えるときに使われるのが「陳述的記憶(ちんじゅつてききおく)」。
この「陳述的記憶(ちんじゅつてききおく)」をする時に大事な役割を果たすのが、脳の「海馬」と呼ばれる部分。
ただし、この「陳述的記憶(ちんじゅつてききおく)」は一度覚えても、結構忘れたりしてしまうものです。
次に「手続き記憶」についてですが、こちらは泳ぎ方や自転車の乗り方などを覚える記憶で、一度しっかり覚えれば、なかなか忘れることはありません。
いわゆる「体が覚えている」というやつです。
10年以上乗っていなかった自転車に久しぶりに乗ってみたけれど案外乗れたなぁ、という経験をしたことがある人もいるかもしれませんね。
ちなみに「手続き記憶」も脳を使って記憶しているという点では「陳述的記憶(ちんじゅつてききおく)」と同じです。
ただ「陳述的記憶(ちんじゅつてききおく)」では「海馬」が中心的な役割を果たしていましたが、「手続き記憶」の場合は、「大脳基底核(だいのうきていかく)」という脳のずっと奥にある部位と、脳の後ろ側、下側についている「小脳(しょうのう)」がメインとなります。
脳が身体の筋肉を動かす・止める時に「大脳基底核」が、筋肉の動きを細かく調整してスムーズに動かすために「小脳」がそれぞれ働くのですが、
私たちが、何度も失敗しながら一生懸命体を動かして練習するうちにこの「大脳基底核」と「小脳」とのニューロンネットワークが正しい動き方を学んで記憶していくという仕組みになっています。
だからこそ、身体で覚える「手続き記憶」は長く私たちの脳に記憶として刻み込まれるのです。
そういえば私自身、漢字や歴史の単語などを覚える際、ただその文字の羅列を見つめるだけではなく、一生懸命書き取りをしたり声に出して読んでみたりして来たわけですが、
特別に意識していたわけではないにしろ、身体で覚えた方が記憶に残りやすい、ということを体現していたのかもしれません。
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さて、前置きがだいぶ長くなりましたが、今回は「身体が覚えている」って本当にあるんだなぁと改めて実感した体験談を書き残しておこうと思います。
それは、数年前に約20年ぶりにスキーに行った時のことです。
私が初めてスキーをしたのは、幼稚園の頃。通っていた幼稚園が宿泊アリでそういうイベントを組んでいたんですね。
そして小学校1〜2年の頃に家族で2度ほど行ったきり、その後は約20年、まったく滑っていなかったわけです。
で数年前に、今もお付き合いしている彼からスキーのお誘いを受けまして。時期は3月頃。12月末〜2月までのハイシーズンではなく、いわゆる「春スキー」のシーズンですね。
場所は栃木県那須塩原市にある「ハンターマウンテン塩原」。寒いのが苦手なのでそこそこ気温もあったかかかったのは嬉しかったんですが、道中花粉症の症状が辛かったのも覚えています(笑)
で、さすがに約20年滑っていないということもあってウェアも板も全く所持していなかったので、スキー場に到着後は一式借りるところからスタート。
(事前にWEB予約しておくとレンタル代が少し割引されるので、今後行こうかなと思う人はぜひチェック&予約しておいてください)
高所恐怖症なのでリフトもなかなかに辛かったのはさておき、さすがに人生の過半がブランク期間なので最初は初級者コースを滑って、後から大丈夫そうであれば中級に行こうという感じでリフトにも乗車しまして。
あ、ちなみに高所恐怖症の一員として、狂気の沙汰としか思えない2大巨塔が観覧車と、外の景色が見えるタイプのエレベーターです。
私見ですが、共通点はどちらも上昇・下降中に気を紛らわせられるものが何もない点です。
これがジェットコースターであれば、最初の登り坂さえクリアすればあとはギャーッと叫んでいるうちに終わります。
飛行機も、別に外の景色を見なくても機内のテレビや音声チャネルを楽しんでいれば、あっという間に雲の上です。
これが観覧車になると、同乗者を見つめていることしかできなくなります。見つめ合うと素直にお喋りできない、というより、見つめていないと早く降りたくて降りたくて震えるしかなくなるのです。
あとは外の景色が見えるタイプのエレベーターですが、新卒の頃に就活として面接に行った某社のエレベーターがまさにこのタイプでして。
対策して来た内容などを面接前に復習しておきたかったんですが、階数のボタンが並んでいる箇所をジッと、穴が開くくらいジーッと見つめていても、見事にその内容が吹っ飛びましたね。
まぁそれなりに大きな企業ではありましたから当然応募者も多かったでしょうし、高所耐性もひとつの足切り基準として成立していたのかもしれません。知らんけど。
閑話休題。
で、最初の数回は初級者コースでシャーッと滑ったわけです。
勢いを殺したり止まりたいところで止まれたりとか、そういうところは大丈夫なのかな、と思いつつ、案外なんとかなるもんだなぁと身体の記憶に感心したところで、ようやっと中級者コースにチャレンジします。
思えば約20年前も同じように初級者コースを数回滑った後に中級者コースにチャレンジしたなぁ。
などということを懐かしく思い出す余裕さえありました。
さすがに中級者コースになると加速具合が初級者コースと格段に違ったので多少焦りはしましたが、
そこは初級者コース同様、数度滑れば約20年のブランクも何のその、身体に刻み込まれた記憶が呼び覚まされて、何とかなるわけです。
なので、実際に現地に赴くまでは「もしヤバかったら料金はもったいないけど、彼1人に行ってもらって自分は見学に回る」という選択肢も視野に入れていたにもかかわらず、
予約を取っていたホテルに間に合うように、ハンターマウンテン塩原を出ると決めていた時間目一杯までスキーを楽しむことができました。
恐るべし、大脳基底核&小脳がタッグを組んだ手続き記憶。恐るべし、身体が覚えているというモード。
なお、その日の宿は時間制限付きとはいえ貸し切り露天風呂もある素敵な宿だったんですけれども、
どんなに身体の芯から温まって、ある程度コリなども緩和できたであろうとはいえ、よる年の瀬には逆らえなかったようで、しっかり翌日筋肉痛に見舞われました。
いくら大脳基底核&小脳のタッグが筋肉のスムーズかつ細やかな動かし方・止め方を覚えていたとしても、
どうやら今現在の私の身体を構成している筋肉が許容できる負荷の限界については門外漢の模様です。
まだ、翌日に筋肉痛の症状が襲ってくるだけ私の身体は若々しい、ということなのかもしれませんけどね。
当時の私は30代前半でしたけれども、同年代だとすでに「筋肉痛は翌々日」という人もチラホラ出て来ていたくらいですからね。
ちなみに、特にふくらはぎ〜太ももにかけてがヤバくてもそこが筋肉痛に見舞われる要因に心当たりがある日の翌日にはその症状が出てくるくらいなんですが、
それは単(ひとえ)に、私がデスクワークではなく体を思いきっきり使うような職に従事しているからなのかもしれません。
筋肉痛に見舞われる、という事実に変わりはないので、相対的に筋肉量が足りていないという証左であることは否定できない状態しれませんが。
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というわけで、ここまで「身体が覚えている」の実体験について、私の観測範囲で心当たりのある体験とともにつらつらと書いて来ました。
そういえばスキー以外で約20年来やってないことはないかなぁとこの段階でふと振り返ってみたのですが、該当しそうなのが今のところ一輪車しかありませんでした。
何故かは思い出せないんですが、幼稚園年長の頃、何故か周りで流行ってたんですよね。
いずれ機会があれば、約20年ぶりの一輪車にもチャレンジしてみたいと思います。
なお、本記事は3000文字チャレンジ(@challenge_3000)という企画の参加記事となります。
というわけで、お題と企画のルールについてはこちらから↓
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正直、スキーよりも一輪車チャレンジの方がハードルが高いんじゃないかと思う今日この頃ですが、
もし機会があったら今回の記事の続編としてそのあたりの体験談を語りたいと思います。
この記事を書いた人:藤代あかり(@akari_fujishiro)