「忘れられない恋って、本当にあるんだろうか。」
そんな問いがふと頭に浮かぶときに、思い出す人がいるような気がします。
島本理生さんの『ナラタージュ』は、タイトルだけでどこか胸の奥を刺激してくる、不思議な引力を持った小説です。
恋愛小説と聞いて身構える人にも、逆に期待してしまう人にも、それぞれ違う形で引っかかってくる作品。
今回は、この『ナラタージュ』について、読後に残った感覚を中心に紹介していこうと思います。
小説『ナラタージュ』概要
『ナラタージュ』は2005年に角川書店より発行された島本理生さんによる日本の小説。
あらすじは以下の通り。
壊れるまでに張りつめた気持ち。そらすこともできない――二十歳の恋
大学二年の春、片思いし続けていた葉山先生から電話がかかってくる。泉はときめくと同時に、卒業前に打ち明けられた先生の過去の秘密を思い出す。
引用元:「ナラタージュ」島本理生[文芸書] |KADOKAWA
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小説『ナラタージュ』のレビュー・感想
『ナラタージュ』は、「忘れられない恋」という言葉が、これ以上なくしっくりくる作品だと思います。
読み始めてまず感じるのは、文章の温度の低さと、感情の熱さのアンバランスさ。
淡々としているのに、ふとした一文で胸の奥を掴まれるような感覚があって、気づけば静かに深いところまで連れていかれる。
恋愛小説ではあるんだけど、いわゆる甘さや高揚感よりも、「思い出してしまうこと」そのものの痛みがずっと残る物語です。
『ナラタージュ』で描かれる恋は、正しさやタイミング、理屈ではどうにもならないものばかり。
好きだという気持ちがあるのに、それを選べない現実があって、それでも心は簡単に切り替えられない。
誰かを想い続けることが、前向きな行為として描かれていないところが、この作品の苦さであり、誠実さでもあるように感じました。
特に印象に残るのは、登場人物たちが感情を大げさに言葉にしない点です。
泣き叫ぶわけでも、劇的にぶつかるわけでもない。
その代わりに、沈黙や距離感、言えなかった一言が積み重なって、後からじわじわ効いてくる。
恋愛の一番しんどい部分って、実はこういうところだよな、と妙に納得させられます。
また、『ナラタージュ』は「過去を語る」という形式をとっていることもあって、物語全体にどうしようもない後戻りできなさが漂っています。
もう終わったはずの出来事なのに、語ることでしか整理できない感情がある。
その語り自体が、まだ終わっていない証拠のようにも見えてくるんですよね。
読み終えたあとに残るのは、すっきりした感動というよりも、少しのざらつきと余韻。
「あのとき、別の選択はできなかったのか」と考えてしまうけれど、きっとそれも含めて、その人の人生だったんだろうなと思わされる。
派手さはないけれど、恋をしたことがある人なら、どこかで自分の記憶と重なってしまう。
『ナラタージュ』は、そんな静かで、でも確実に心に残り続ける一冊です。
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小説『ナラタージュ』まとめ
というわけで、小説『ナラタージュ』を紹介してきました。
よかったらぜひこの機会に読んでみてください。
この記事を書いた人:藤代あかり(@akarifujishiro)



