以前『俺の平成テレビドラマベスト3「踊る大捜査線」「ウロボロス」「白夜行」』という記事で、平成のテレビドラマを振り返りつつマイ・ランキングを書かせていただいたのですが、
その時惜しくもベスト3からは漏れたものの、とても印象が深く、思い入れもあるドラマのひとつに、2008年に放送された「ラスト・フレンズ」があります。
こちらもかなりオススメなドラマですので、今回の記事ではその魅力を紹介していきたいと思います。
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ドラマ「ラスト・フレンズ」概要
「ラスト・フレンズ」基本情報
2008年春にフジテレビにて放送。
主演の長澤まさみさんの他、主要登場人物を上野樹里さん、瑛太さん、水川あさみさん、錦戸亮さん、山崎樹範さんたちが演じており、
これまで描きにくいとされてきたDVやセックス恐怖症、性同一性障害などの、現代社会の中で問題化しているテーマについて真正面から捉えた本ドラマの内容と、先の読めない展開が大きな話題を呼んだ作品に仕上がりました。
ドラマ「ラスト・フレンズ」のあらすじ
ドラマの主題歌である宇多田ヒカルさんの『Prisoner Of Love』とともに流れるオープニングのタイトルバックは、
この物語の主人公である美知留がかつて共に暮らしたシェアハウスの面々と、美知留の恋人・宗佑が抱える悩みのテーマが英語で表されていたり、
これからのストーリー展開を思わせるさまざまな工夫が施されていて、とても印象に残っている人も多いのではないでしょうか。
それぞれの登場人物を表す英単語とその意味は以下の通り。
「Love=愛」→藍田美知留(あいだみちる/長澤まさみさん)
言うなれば「母親」である前に「女性」であった母の愛情の薄さを感じながら、早く独立したいと願っていた一方で、恋人からの激しい束縛とDVに悩まされる。
「Liberation=解放」→岸本瑠可(きしもとるか/上野樹里さん)
性同一性障害に悩みながら、性別や外見にとらわれずに自身の能力を評価されたい、とモトクロス選手として全日本選手権の優勝を目指す。
「Agony=苦悩」→水島タケル(みずしまたける/瑛太さん)
過去に血の繋がらない姉から受けた行為によってトラウマが残り、女性との接触・セックス恐怖症となる。
「Solitude=孤独」→滝川エリ(たきがわえり/水川あさみさん)
楽しいことや面白いことが好きなムードメーカーで、サバサバとした性格であり、思いやりのある優しい一面もある。一方で本当は誰よりも孤独を感じやすく、セックス依存症に陥っている。
「Contradiction=矛盾」→及川宗佑(おいかわそうすけ/錦戸亮さん)
幼い頃に母親に捨てられ、親戚中をたらい回しにされていた経緯から、美知留と幸せな家庭を築きたいと願っている。ただ、美知留への想いの強さが強い執着心と異様なまでの独占欲を生み、彼女を監視してその行動を束縛し、やがてはDVを行うようになってしまう。
「ラスト・フレンズ」はそんな5人のそれぞれに抱える問題に焦点を当てつつ、またそれぞれに誰かに対して抱く思いにも焦点を当てた、「恋愛要素もある人間ドラマ」と個人滴には捉えています。
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「ラスト・フレンズ」のレビュー・感想
フィクションだからこそ抱ける感情。宗佑について
「ラスト・フレンズ」を当時観ていた方にとって、ある意味トラウマになりかねないほど印象的だったのは、錦戸亮さん演じる及川宗佑だったのではないでしょうか。
彼がジャニーズJr.だった時代、まだ声代わりをする前の愛らしい姿を『8時だJ』で観ていた私にとっては、特に衝撃が大きかったというのもありますが……。
美知留を監視し、束縛する。
自分の思い通りにならないと彼女に対して振るう暴力。
彼女が心身に受けた傷を見かねて美知留を連れ出した瑠可やタケルに対しても容赦ない攻撃。
どれをとっても迫真の演技すぎて、放送終了後から何年経っても、このドラマを思い出す時に真っ先に思い浮かぶのは彼のことです。
ただ、このドラマでは彼の「怖さ」だけを描かなかったことが、彼を徹底的に悪人にしなかった点が、よかったと言えるのではないかとも感じています。
ドラマの最後、彼は同棲を解消して出て行こうとする美知留に対して、
「荷物をまとめたから取りに来て欲しい」
と誘い出した上でレイプするのですが、
「瑠可やタケルに危害を加えないと約束してくれるなら、これからも側にいてあげる」
そういって涙を流す美知留を置いて、宗佑は隣室へ。
そこで、彼女の荷物からこぼれ落ちた、シェアハウスの面々との写真を目にするんですが、
その写真には、自分の前では見せたことの無いような、美知留の心からの笑顔が写されているわけです。
それを見ながら泣き崩れる宗佑。
そうして、エンドロールとともに、朝起きだした美知留が、彼女に、と宗佑が用意していたウェディングドレスを抱きながらリビングのソファですでに帰らぬ人となっている彼を発見するところで、最終話のひとつ前の話が終わるんですね。
最終話で読み上げられる彼の遺書は、どうにも胸が締め付けられるような内容でした。
「生きてる限り僕は君を縛ってしまう。だから君に自由をあげるにはこの心臓をとめるしかない。」
「僕は君のすべてになりたかった。君の見る世界のすべて君を照らす光のすべて、君の感じる喜びのすべてでありたかったんだ。どこまでもいつまでも僕は君と一つでいたかった。」
(遺書の全文は、当時書き起こしてくださった方々がたくさんいらっしゃるので、ぜひ検索してみてください)
瑠可やエリに言わせると「(これまでやってきたことを思えば)反省したからといって、身を引く手段として自殺するのは身勝手」というのは頷ける部分はあります。
というか、これがドラマでありフィクションの世界であるからこそ、おそらく私も、このシーンで宗佑を思い、切なさを感じたのだとも思います。
結局「君を自由にしてあげる」と言いながら子ども残してるやんけー!と突っ込むところまで、これがひとつの物語だからこそ許されるのかな、と。
そういえば、この文面を読み上げる錦戸さんの声は、ここまでで登場した、美知留に相対する時の宗佑の中では一番優しい声をしていたように思います。
その他の部分に関して
正直にいうと、宗佑を受け入れられるかと同等くらいで、美知留を受け入れられるかがこのドラマを観る上では重要なポイントであるような気がしています。
彼女もまた家庭環境としては恵まれていなかったので、宗佑と一種の共依存関係にあったのは致し方のない部分もあったように思いますが、
他人に流されやすく、また頼り過ぎる面もあるのがね……。
最終話では不当な暴力や監視・束縛といった環境から脱せたという点は救いではあるけれど、それが宗佑の死をもって、という最悪の形で迎えてしまったことについて、
美知留は彼を見捨ててしまったからと自分を責め、後を追うことを考えるのですが、かつての知り合いに救われたのちにやがて妊娠が発覚したことについて、
彼女を迎えにきた瑠可とタケルにこんな風に語るシーンがあります。
「生きていていいのだと、やっと宗佑に許された気がした」
恋人の自殺ということがあれば、割り切れないものではあるとは思いますし、だからこそ、その道を選んだ宗佑に対して、なんて自分勝手な!とは考えられないのも納得するところではあるのですが、
そうか、そんな風に捉えるのか……。
と少し引いた目で見てしまった部分もあったので、そのあたりはどう捉えられたのだろうと気になるポイントでもあります。
瑠可やタケル、それから自殺を止めてくれた知人など、周りに救われて生きてきた彼女が、今後どうなるのか、どうしていくのか。
心配になるところではありましたね。
その点では、妻に浮気された小倉友彦(おぐらともひこ、通称おぐりん/山崎樹範さん)と不倫関係にあったエリが、
彼の転勤とともに家庭に帰ることを決めた時の潔さは対照的であり、とてもよかったなと感じました。
瑠可にはもっと責めてもいいのに、薄情ではないかとも言われるんですが、笑顔で彼を見送ることを決めた姿に、エリの幸せを願わずにはいられませんでしたね
。
結局おぐりんが赴任先で妻と別れてエリを迎えに来たのもよかったです。
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ドラマ「ラスト・フレンズ」まとめ
実はこのドラマ、2008年の放映時にはリアルタイムで追えなかった事情がありまして。
というのも、
「身体的な暴力はないものの、束縛・依存傾向の強い人」
と、若干宗佑を想起させるような方と何とか別れたばっかりの時期に放送されていたんですよね(笑)
なので、ここまで紹介してきたドラマの内容に、何かしら視聴をためらうような引っ掛かりを感じた方には、あまり観ることをオススメできない作品でもあります。
ただ、それを抜きにすれば見応えのあるドラマではあるので、ぜひまとまった時間の取れる連休中などに観ていただけたらな、と思います。
この記事を書いた人:藤代あかり(@akari_fujishiro)