『遺体と火葬のほんとうの話』内容紹介・レビュー

書籍

藤代あかり(@akari_fujishiro)です。

冠婚葬祭、という言葉がありますが、「冠」と「婚」に比べて「葬」と「祭」に関する正確な情報というものは、

その内容の性質も相まってかあまり広く出回っていません。

そのためにデマや都市伝説的な情報が「真」として広く流布してしまうことも……

そうした現状を危惧して、葬儀会社の代表という現場の立場から正しい情報を、そして「お弔い」に関する心構えについて日々発信を続けている、佐藤信顕さんという方がいらっしゃいます。

もともと『葬儀・葬式ch』という佐藤さんのYouTubeチャンネルをよく観ていたのですが、

今回そんな『葬儀・葬式ch』をまとめた一冊

『遺体と火葬のほんとうの話』

という著書が刊行されたということで、手にとって実際に読んでみました。

その本の内容や、読んでみて感じたことなどを今回は紹介していきたいと思います。

著者・佐藤信顕さんについて

本書の著者である佐藤信顕さんは、1級葬祭ディレクターであり、有限会社佐藤葬祭という葬儀会社の3代目代表でもあります。

そうした経歴の持ち主ということもあって、映画『おくりびと』の美術協力やメディアへの出演のほか、これまでも『ザ・葬儀のコツ まちの葬儀屋三代目が書いたそのとき失敗しない方法』といった著書も出版されています。

また、何より佐藤さんの活動の中で特徴的なものが、YouTubeチャンネル『葬儀・葬式ch』でしょう。

このYouTubeチャンネルの内容をまとめたものが今回出版された『遺体と火葬のほんとうの話』でもあるのですが、

本書の中でも触れられている通り、佐藤さんは以下の信念に基づいて動画での発信を続けられています。

遺体や火葬の話というのは表立って話すにはとても生々しくて、あまり語られることのないままでした。
ですが、私は「ウソではない、本当の情報を届けたい」。そんな思いから、YouTubeで「葬儀・葬式ch」という動画配信を始めました。

引用元:「遺体と火葬のほんとうの話」

そんな佐藤さんのYouTubeチャンネルはこちら。
葬儀・葬式ch

<以下余談>
ちなみに、葬祭ディレクターとは、厚生労働省が管轄する葬祭ディレクター技能審査協会が実施している「葬祭ディレクター技能審査」に合格することによって認定されるものです。

葬祭ディレクターには1級と2級という等級の区分があり、2級の場合は2年以上、1級の場合は5年以上の実務経験があることが受験資格となります。

*注:葬祭業を営む・葬祭業に従事するにあたってこの資格は必須ではありません。

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『遺体と火葬のほんとうの話』の内容・レビュー

YouTubeチャンネル「葬儀・葬式ch」でも日々さまざまなテーマを取り上げてお葬式・お弔いにまつわる話をされている佐藤さん。

本書はそのまとめということもあり、「遺体の話 」、「火葬の話 」、火葬師の方との特別対談「火葬場のほんとうの話」 、「葬儀の話 」、「心と魂の話」という章立ての中で、

佐藤さんが実際に体験されたこと、専門の方に聞かれたことや調査した結果などに基づき、YouTubeチャンネルの視聴者の方から寄せられたさまざまな質問に回答されています。

「遺体の話」の章ではテーマがテーマということもあり、人によっては読むのをためらわれるような生々しく感じるエピソードもあるかもしれませんが、

私が特に興味深いと感じたエピソード2つを以下で紹介していきたいと思います。

「骨は焼ききれない」「通常の火葬では骨は粉状にならない」

著者の佐藤信顕さんと、元火葬師のディーゼルさんとの対話の中で出てくるこちらのエピソード。

とある宗教学者さんから出た
「お骨は高温で焼き切れるから、あんなに大きな骨壺はいらない」
というお話のおかげで、

「ここで焼き切ってしまってください」
とお骨を持ち帰らないと口にする人や、

実際に火葬炉に入れてしまった後に収骨もせずにご遺族の方がそのまま帰ってしまったりという実害が火葬場で出てしまったりということもあったそう。

また、高温で焼くことでお骨が粉状になると考えている人も多いようですが、

実際にお骨を粉状にするためには「ボールミル」という専用の機械で砕かないといけないのだそうです。

元火葬師のディーゼルさんの以下の言葉はわりとたとえとしてはわかりやすいですね。

ディーゼル:火葬しただけでは”セカチュー”でまいていたような粉にはなりません(笑)

引用元:「遺体と火葬のほんとうの話」

※セカチュー=「世界の中心で、愛をさけぶ」という片山恭一さんが書いた小説であり、2004年に映画化・テレビドラマ化されている作品

このように、遺体や火葬の話というのは表立ってしづらい話題であるだけに、

デマが出てしまっても、それが偽の情報であると広めるための根拠になり得る真実の情報というのもまた世に出回っていなくて、

こうして実際に現場でも影響が出てしまうということのわかりやすいエピソードのひとつかなと思います。

まさに、こういった時のために佐藤さんは発信を続けられているわけですね。

遺体や火葬の話というのは表立って話すにはとても生々しくて、あまり語られることのないままでした。
ですが、私は「ウソではない、本当の情報を届けたい」。そんな思いから、YouTubeで「葬儀・葬式ch」という動画配信を始めました。

引用元:「遺体と火葬のほんとうの話」

なお、本書内では実際にお骨を焼ききるのに何度必要か、実際の火葬炉では何度でお骨を焼いているかといった数字も出ていますので、よかったら合わせてチェックしてみてください。

生きているときは「独りだ」と思っても、自分で自分を弔うことはできない

続いてはこちらの話題。
こちらについてはひとつの質問に対するひとつの回答というわけではなく、本書の随所に、このテーマについてかんがえさせられるエピソードが散りばめられています。

というのも、世の中にはいろんな家庭事情を持った方がいます。

さまざまな事情で家族親類と距離を置いている人もいるでしょう。

そのことによって、自分の血縁者のお弔いのことを考えたくない。

あるいは、自分がなくなってしまった時に、親類縁者の誰かの手をお弔いのためにわずらわせたくない。

「誰にも迷惑をかけずにひとりで旅立てれば」

と考える人もいるでしょう。

けれど、どんなに生きている間は天涯孤独の身でも、亡くなった時にご遺体を発見する人、時には警察、お弔いを行う葬儀会社さんや火葬師さんなど、

自身の弔いは自分ではできないために、誰かの手を借りなければならないということは、頭の片隅にでも置いておく必要があるな、と改めて感じさせられます。

また、少し話が逸れますが、生きている間に生活に余裕がなく、残された家族などに金銭的な負荷をかけてしまうことが忍びない。

もしくは、家族が亡くなってしまった時にお弔いのためにかかる費用が心配だ、という方もいらっしゃるかと思います。

そんな時に、利用できるかもしれない各種公的な援助についても本書では記載されているので、

もしもの時のための知識として、内容を確認しておくと良いでしょう。

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「遺体と火葬のほんとうの話」まとめ:お弔い不要論に寄せて

仕事の場で「合理性」を求める動きというのは私自身も会社員時代にしきりに訴えていた側面もあり、理解・共感できる部分も多々あるのですが、

お葬式を始めとしたお弔いの場にその理論を持ち込む人がいることには違和感を感じざるを得ませんでした。

この違和感の正体をこれまでは上手に言葉にすることができなかったのですが、本書に出てくる佐藤さんの以下の言葉が、個人的にはしっくり来るな、と感じています。

お弔いをするうえで、過去のことに悩んでいたり、後悔したりしている方たちにとっては、お墓参りや仏壇にお焼香をあげるといった行ないが実は非常によく効きます。
心の問題を真正面から心だけで受け止めようとしても、それが難しい場合も多々あるのです。ですからこういうケースに対しては「こういうことをやったよ」という目に見える形で一日一日と積み重ねていくこと。これが、私がよくお話する「形の力」というものです。

引用元:「遺体と火葬のほんとうの話」

親しい人、愛した人。
反対に、思い返せばマイナスの感情しか浮かばず、縁を切りたいとすら願ったこともあった、身近な人の死。

それは、やはり「合理性」でことを進めることだけでは片付かないことでしょう。

そうして常ならぬ時に、少しでも後悔がないように見送れるようにと寄り添う仕事。

また、過去のそうした場面に対して胸に引っかかりを残したままの方の心が少しでも安らぐように。

そんな佐藤さんの葬儀屋さんとしての矜持が感じられる一冊が、この「遺体と火葬のほんとうの話」なのではないでしょうか。

ぜひYouTubeチャンネル『葬儀・葬式ch』とともに、ひとりでも多くの方に読んで観てもらいたい一冊です。

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