映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』 家を持たない暮らしの明と暗

映画

先日友人が「これは面白い」と紹介してくれたんですが、その映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』がいろいろと考えさせられる内容だったので、今回は紹介していこうと思います。

あなたは「家を持たない暮らし」と聞いて、どんなことを想像し、考えるでしょうか?

[sponsered link]


映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』概要

『ホームレス ニューヨークと寝た男』基本情報

2014年に公開された『ホームレス ニューヨークと寝た男』(原題:HOMME LESS)は、元モデルで現在は写真家であるマーク・レイという男性に、同じく元モデルであるトーマス・ウィルゼンソン監督が2年間密着した、というドキュメンタリー映画。

ちなみに監督にとっては長編映画デビュー作となり、キッツビュール映画祭で初演された後、DOC NYCでも上映され、そしてメトロポリス大賞を受賞しています。

『ホームレス ニューヨークと寝た男』あらすじ

ファッション・フォトグラファーのマーク・レイは、日々朗らかに、彼が持つ巧みな話術でニューヨークの道ゆくファッショニスタたちに声をかけ、シャッターを切っている。

自身も元モデル、ということもあり、52歳という年齢を感じさせないほどハンサムでスタイリッシュな彼ですが、

荷物は通っているスポーツジムのロッカー(4つ使用)に預け、身だしなみはジムのシャワールームや公園のトイレなどで整え、寝床はとあるアパートメントの屋上、という側面も持っている。

いわゆる「ホームレス」という状態でもあった。

マーク・レイが家を持たずにニューヨークで暮らす、その日常生活とそんな生活に至った背景、彼が考える今後について、本作では迫っていきます。

[sponsered link]


『ホームレス ニューヨークと寝た男』のレビュー・感想

「ホームレス」と聞くと、どうしても新宿や池袋といった大きな駅のシャッターの前で寝起きする、そんな人たちの姿を想像してしまいます。

仕事をなくしたといった理由から、生活を支えきれなくなったりして、家を持つ暮らしから離れていった人々。明日の食事にも困り、家族親類・友人といったつながりも持ち合わせていなさそうな人たち。

自分が彼らに対して抱いてしまうのは、そんなイメージだ。

しかし、この映画に登場するマーク・レイは、そんな自分のイメージする「ホームレス」の姿とは全く重ならない。

ファッション・フォトグラファーの他、映画にエキストラとして出演するといった仕事もあるし、友人達や家族との関係も良好そうだ。

そういえば、1番驚いたのが彼がクレジットカードを使えていることだった。実に6年もの間屋上暮らしをしていたら、日本だとなんとなくカードなんて持てないんじゃないかと考えたりもしますが、その辺りは国の違いなのかな。

なぜだろう、と思ったけれど、ただ、彼はこの生活を自ら選んだということは、映画を観ていく中で感じ取れた。

ただ「自ら選んだ」とはいっても、そこには前向きさはあまり感じられなかったように思う。

ファッション業界は見た目にはとても華やかだけれど、モデルとしての彼も、フォトグラファーとしての彼も、収入の不安定さや低さというのは逃れられないもの。

また、どうしたってニューヨークのような大都市は家賃が高い、という背景を持っている。

企業やデザイナー、一握りのトップモデルなどでなければ、家を持ちながらニューヨークで生活していく、というのは過酷なことなのかもしれない。

ファッション業界は華やかなだけあって、生活の部分も去ることながら、出入りし続けるためにはどうしたってある程度はスタイル・ファッションなどを維持しなければならないだろう。

仕事を続ける自分自身の水準を維持しながら、決して多くはない収入で生きていく、といったことを考えたときに、彼が取った方法が、家を持たないという暮らしだったのかもしれない。

そういえば、この映画が公開されてしまうと、彼は住処である雑居ビルの屋上を追い出されはしまいかと、この映画を観ている最中も、そして観終わってからも、心配の種は尽きなかった。

いろんなところで情報を探したのですが、さすがに例の屋上にはもう出入りできなくなってしまったので、実家のニュージャージー州に生活の拠点を置きながら、

ニューヨークで過ごす間はカウチサーフィンという、他の人の家のソファに泊めてもらいながら互いに交流していく、という、シェアリングサービスを利用しているらしい。

収入が安定しそうな(豊かな生活ができるかはさておき)生活を選ぶということをせずに、この暮らしを続けていた彼ですが、全編を通して、悲壮感はあまりなかったように思う。

もちろん、将来について全く不安に思っていないということではないけれど
(未来のことを考えながら瞳を潤ませるシーンもあった)

「自分を憐む暇があったら仕事を探せ。部屋を借りろ。そう思ったら、俺のケツを蹴りに来い」
「この映画を観ている人、一人一人の家に泊めてもらう権利が俺にはある」

といったシーンには、ある種の覚悟(といっていいものかわからないが)を感じられ、カッコよさすら感じられた。他方で、

「ドル箱スターの演技を見るだけ、知性は必要とされないモデルの仕事。何も親孝行出来なかった」

と語る姿には哀愁も感じられた。

羨ましいとは手放しに言えない彼の生活だけれど、それが望んだものであれそうでなかった部分があったのであれ、金持ちや強者には優しく、貧者・弱者には生き難い国、というのは、いずれは日本も迎える姿なんじゃないかとも思うと、

選んだ道に覚悟を持つ彼の背中は、考えさせられることが多い。

そんなふうに感じた映画でした。

映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』まとめ

というわけで、映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』を紹介してきました。

ちなみに『ホームレス ニューヨークと寝た男』ですが、字幕版をAmazonプライム会員はプライム・ビデオで鑑賞することができます。

よかったらぜひこの機会に観てみてください。

この記事を書いた人:藤代あかり(@akari_fujishiro)